判旨
請負代金の支払について、元請負人と発注者の間の決済条件とは無関係に、下請負人と元請負人の間で行われた検査を基準として支払時期や単価を定める旨の暗黙の合意が成立したと認められる場合、元請負人は合意に従った支払義務を負う。
問題の所在(論点)
終戦という社会情勢の激変により加工物件が実質的に無価値となった状況下において、従前と同様の支払単価および支払時期による加工賃支払の「暗黙の合意」が成立したと認められるか。
規範
契約当事者間において、特定の支払時期や支払単価を定める合意は、明示のものに限らず、従前の取引実態や終戦等の社会情勢の変化に伴う当事者間の対応に照らし、暗黙のうちに成立し得る。また、中間業者が発注者から受ける決済条件とは別に、下請業者との間で独自の検査基準に基づき支払時期を定めることは、取引上の合理性を有する。
重要事実
上告人(元請負人)と被上告人(下請負人)は、航空兵器の加工賃について、終戦前は「上告人の検査合格を基準として毎月20日締め翌月5日払い」としていた。終戦により物件の価値が喪失・減少したものの、昭和20年9月、両社間では終戦後も加工賃の金額及び支払時期を終戦前と同様とする旨の暗黙の合意が成立したと認定された。
あてはめ
終戦により物件が価値を失ったとしても、既に加工を終えた最終下請人にその損害を当然に帰せしめる理由はない。むしろ、従前の取引慣行を維持する合意がなされることは実験則上不自然ではない。本件では、上告人と訴外発注者間の決済方法にかかわらず、上告人と被上告人間の合意によって、上告人自らの検査を基準に支払時期を定めることは取引界で広く見られる事例であり、有効な合意として認められる。
結論
終戦後も従前と同様の条件で支払う旨の暗黙の合意が成立しているため、上告人は約定の支払期に加工賃を支払う義務を負う。
実務上の射程
契約解釈における『暗黙の合意』の認定手法を示す。特に、上位の取引(発注者・元請間)の成否や条件が当然に下請取引に影響するわけではなく、個別契約における合意内容が優先されるという、契約の相対性の原則を確認する際に有用である。
事件番号: 昭和25(オ)225 / 裁判年月日: 昭和28年3月12日 / 結論: 棄却
本件請求原因は、昭和二十年九月二日の契約(甲一号証)に基く請求にあるのであるか、所論は結局、右請求原因発生の前提たる経過的事実関係の認定に関し原審のなした証拠の取捨判断、事実認定を非難するに帰し、本件請求原因自体には関係ない事柄であつて、たとえ、所論のごとき違法があるとしても、その違法は、原判決の主文に影響なく、所論は…