判旨
請負契約において、工事の早期完成を目的として定められた竣工期限厳守の合意は、期限内に完成した場合には謝礼金を支払い、遅延した場合には一日ごとに一定額を支払うという特約として有効に成立する。
問題の所在(論点)
請負契約において、通常の建築期間より短い竣工期限を設定し、期限の遵守および遅延に対して金銭の授受を約する特約の有効性。
規範
請負契約の当事者が、特定の目的(早期の営業開始等)のために竣工期限を厳守する旨を合意し、期限遵守の場合の謝礼金支払と遅延時の損害賠償額の予定を定めた場合、その合意に至る特段の事情が認められる限り、私法上の有効な契約条項として認められる。
重要事実
被上告人はダム建設により居宅を失い移住したが、移住先で飲食店を営むため急遽家屋を建築する必要があった。そこで、竣工期限(昭和29年3月30日)を厳守させる趣旨で、期限内に竣工した場合は請負代金20万円のほかに特別謝礼金1万円を支払い、遅延した場合は1日につき1000円の支払を受ける(違約金)という条件を提示した。請負人である上告人は、建築期間が冬期で通常より短期間であったものの、これを承諾し、書面の作成についても「約束は必ず実行する」として押印した。
あてはめ
本件では、注文者が飲食店経営を急いでいるという具体的な必要性があり、建築竣工期限を厳守させる強い動機があった。請負人も、その趣旨を理解した上で自ら押印し、期限厳守を承諾するに至った特段の事情が認められる。建築期間が冬期で短かったとしても、当事者の自由な意思に基づいて合意がなされた以上、約定は有効である。したがって、期限遵守の場合の謝礼金支払や遅延の場合の支払義務に関する合意は効力を有する。
結論
竣工期限厳守の特約は有効であり、上告人はその約定に従った責任を負う。本件上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、請負契約における「損害賠償額の予定」(民法420条1項)や「期限遵守によるインセンティブ支払」の有効性を示すものである。答案上は、工期遅延による違約金請求がなされた場面において、その特約が当事者の合意に基づき有効に成立していることを認定する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和24(オ)241 / 裁判年月日: 昭和25年12月12日 / 結論: 棄却
訴訟委任状は、印紙が貼用されていなくても、無効ではない。