判旨
請負契約において、注文者が請負人の技術不足等を知りながら技術援助の約束を反故にし、あえて履行遅延を放置して多額の違約金を請求することは、信義誠実の原則に反し許されない。
問題の所在(論点)
注文者が請負人に対して技術的援助を約束しながらこれを行わず、一方で履行遅延を理由に多額の違約金を請求することが、信義則に反し許されないか。
規範
権利の行使であっても、相手方の窮状に乗じ、自己の協力義務や信義則上の配慮を著しく欠いた態様でなされる場合には、信義誠実の原則(民法1条2項)に照らし、その濫用として許されない。
重要事実
上告人(注文者)は、高度な技術を要する電解槽の製作を、技術不足の被上告人(請負人)らに発注した。工事が難航する中、上告人は技術援助を好意的に約して工事完成まで月額20万円の違約金支払を約束させたが、実際には一切の援助を与えなかった。被上告人が完成の見込みを通告した後も、上告人は協力を拒みつつ履行遅延による違約金の累加を期待するかのように本訴を提起し、多額の違約金を請求した。
あてはめ
上告人は、自らの技術的協力なしには工事完成が至難であることを熟知しながら、援助の約束を信頼して多額の違約金条項に応じた被上告人に対し、何ら援助を与えなかった。そればかりか、契約金の累加を期待するかのように一切の協力を拒んで訴えを提起しており、このような態度は被上告人に対する信義誠実の態度に著しく欠ける。被上告人が完成を確約した期限以降の違約金請求は、徒らに権利行使に籍口して難きを強いるものであると評価される。
結論
被上告人が完成を確約した期限(昭和24年10月末)経過後の期間に対応する違約金請求は、信義則に反し、権利の濫用として認められない。
実務上の射程
契約上の権利行使であっても、当事者間の信頼関係や協力の経緯に照らして著しく不誠実な場合には、信義則(1条2項)による制限がかかることを示す。特に、不均衡な技術力・交渉力がある場面での違約金請求の可否を検討する際の有力な指標となる。
事件番号: 昭和32(オ)223 / 裁判年月日: 昭和33年5月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】請負契約において、工事の早期完成を目的として定められた竣工期限厳守の合意は、期限内に完成した場合には謝礼金を支払い、遅延した場合には一日ごとに一定額を支払うという特約として有効に成立する。 第1 事案の概要:被上告人はダム建設により居宅を失い移住したが、移住先で飲食店を営むため急遽家屋を建築する必…