判旨
金銭債務の支払時期について、債務者が所有する鉱山の権利譲渡や事業の成功を条件とする特約の存在を否定し、原審の証拠判断を維持したものである。
問題の所在(論点)
金銭債務の履行期について、特定の不確定な事実の発生を待つという特約の存否が争点となった。具体的には、書面の記載と異なる口頭の特約の主張に対し、裁判所がどのような基準で事実を認定すべきかが問題となった。
規範
当事者間において債務の支払時期に関し、特定の事実の発生(鉱山の譲渡や事業の成功等)を待って支払う旨の特約の有無については、証拠資料に基づき、契約当事者の合理的合意の有無を認定すべきである。事実認定の過程において採証法則に違反しない限り、裁判所の証拠の取捨判断及び事実認定は専権に属する。
重要事実
上告人は、5万1000円の分割金支払について、自己の所有する鉱山の権利を他人に譲渡した際、または事業に成功した後に支払う旨の特約(不確定期限ないし条件)が存在したと主張した。一方、書面(証書)には昭和16年7月から毎月3000円ずつ分割弁済する旨の記載があった。上告人は、鉱山が休坑・廃坑となったため支払不能であると抗弁したが、原審は特約の存在を認めるに足りる証拠がないとしてこれを退けた。
あてはめ
上告人は、鉱山経営の資金欠乏という当時の状況を強調し、書面の記載にかかわらず上告人主張の特約に了解が成立していたと主張した。しかし、判旨は、原審が提示した証拠に基づけば、原審の事実認定は妥当であり、特約の存在を否定した判断に違法はないとした。特約を裏付ける客観的な証拠がなく、書面の記載という明白な事実を覆すに足りる事情がない以上、特約は認められないと判断される。
結論
上告人の主張する特約の存在は認められず、分割金の支払義務を認めた原判決は正当であるとして、上告を棄却した。
実務上の射程
本判決は、不確定期限(出世払特約等)の存否に関する事実認定の枠組みを示すものである。実務上、債務の発生自体は争いがないが履行期が争われる場合、書面の記載が優先され、不確定な事実を期限とする特約の認定には厳格な証拠が求められることを示唆している。
事件番号: 昭和36(オ)194 / 裁判年月日: 昭和36年10月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】動機の錯誤については、その動機が相手方に表示され、法律行為の内容とされた場合に限り、要素の錯誤として取り扱うことができる。 第1 事案の概要:上告人は、訴外人物が刑事訴追を受けないことを「絶対の条件」として債務引受の意思表示を行った。しかし、この「刑事訴追を受けないこと」という動機は、意思表示の際…
事件番号: 昭和27(オ)726 / 裁判年月日: 昭和29年9月10日 / 結論: 棄却
将来不成立の場合は返還を受くべき約旨の下に将来成立すべき賃借権の対価として金員を交付した場合において、その賃借権が不成立に終つたときは、その金員の交付をもつて権利金の交付と目すべきでなくこれをもつて直ちに不法原因給付ということはできない。