判旨
加工賃請求と契約解除による損害賠償請求は、事実上および法律上の構成を異にする別個の請求権であり、前者の請求のみを維持する当事者に対し、後者への変更を促す釈明権を行使する必要はない。
問題の所在(論点)
加工賃請求訴訟において、裁判所が契約解除に伴う損害賠償請求への変更を示唆するなどの釈明権を行使する義務を負うか。両請求の同一性が問題となる。
規範
訴訟の請求原因は特定されなければならず、請求権が事実上・法律上の構成を異にする別異のものである場合、一方の請求のみを明確に維持する当事者の主張を他方の請求に読み替えたり、変更を促したりするための釈明権行使の必要性はない。
重要事実
上告人(請負人)は、加工未完成品についても、完成品を基準とした加工割合に応じた「加工賃」そのものを第一審から一貫して請求していた。これに対し、契約解除に伴う「損害賠償」としての請求は行っていなかった。原審が釈明権を行使して損害賠償請求への変更を促さなかったことについて、上告人が釈明権不行使の懈怠(法令違背)を主張して上告した事案である。
あてはめ
加工賃請求権と契約解除による損害賠償請求権は、その発生原因や法的性質が異なり、全然別異の請求権であるといえる。記録によれば、上告人は一貫して加工賃そのものを請求しており、損害賠償の請求でないことは明確であった。このように当事者が特定の法的構成に基づき請求を維持している以上、これと全く異なる損害賠償請求への転換を促すべき法的状況にはなく、釈明権行使の必要性は認められない。
結論
釈明権の不行使に懈怠はなく、原判決に法令違背の瑕疵はない。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
訴訟物の同一性が否定される別個の請求について、裁判所が釈明によって請求の変更を促す義務はないことを示している。処分権主義との兼ね合いで、当事者が選択した法的構成が明確である場合に、裁判所が過度に介入すべきではないという実務指針として機能する。
事件番号: 昭和25(オ)397 / 裁判年月日: 昭和26年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事上告事件において、上告理由が特例法の定める上告事由に該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張を含まない場合には、上告は棄却される。 第1 事案の概要:上告人が、原審の判断に不服として最高裁判所に上告を提起した事案。判決文からは具体的な事件の内容(原告・被告の請求内容や基礎事実)は不明であるが…