判旨
代物弁済予約等の担保契約において、担保物件の価額と被担保債権額に著しい不均衡がない限り、公序良俗に反して無効とはならない。契約の有効性は、特段の事情がない限り、担保契約成立時を基準として判断すべきである。
問題の所在(論点)
不動産を目的とする担保契約(代物弁済予約等)において、債権額と担保物の価額に差がある場合に、公序良俗違反として無効になるか否かの判断基準および判断時期が問題となる。
規範
担保契約が公序良俗(民法90条)に反して無効となるか否かは、契約成立時を基準として、被担保債権の元利金額と担保物件の当時の価額とを比較考量して判断すべきである。両者の均衡が著しく失われており、貸主の暴利を目的とするものと認められない限り、原則として有効である。
重要事実
債権者Dは、債務者(上告人)に対し、昭和15年11月から昭和16年1月にかけて三口の貸し付け(合計約5,000円超)を行った。その際、昭和16年1月の最終的な貸付時に、本件不動産を担保とする契約(弁済期に完済しないときは所有権がDに帰属する旨の予約)を締結した。昭和16年1月当時の不動産価格は8,500円であった。債務者は、弁済期までに債務を完済しなかったが、不動産価額と債権額の差を理由に、本件契約は暴利を目的とする公序良俗違反であり無効であると主張した。
あてはめ
本件では、担保契約が成立した昭和16年1月を基準時として、当時の不動産価格(8,500円)と、被担保債権である三口の貸金元利額を比較すべきである。この点、両者の差は、貸主の暴利を目的とする反公序良俗的なものと断定できるほどの著しい不均衡には当たらない。また、弁済期前に一部の債務が相殺決済された事実があるとしても、残債務が完済されていない以上、契約の趣旨に従い不動産所有権は債権者に帰属する。したがって、本件担保契約を有効とした原判決の判断は相当である。
結論
本件担保契約は公序良俗に反せず有効であり、弁済期に債務が完済されなかった以上、不動産の所有権は債権者に完全に帰属する。
事件番号: 昭和29(オ)854 / 裁判年月日: 昭和31年5月25日 / 結論: 棄却
昭和一六年一一月中に締結された代物弁済の予約について、債権者のなした予約完結の意思表示が、右予約成立後、物価の高騰した昭和二二年一〇月中になされた場合であつても、原審認定の事実関係(原判決参照)の下においては、右予約完結の意思表示は信義公平に反するものとは認められない。
実務上の射程
譲渡担保や代物弁済予約の有効性に関するリーディングケースの一つ。民法90条の適用における「暴利行為」の判断枠組みを示しており、契約締結時の事情報酬を重視する。清算義務の明文化前の判例であるが、現代の答案構成においては、暴利行為の該当性を論じる際の基準時および比較要素(債権額vs担保価値)として引用できる。
事件番号: 昭和41(オ)158 / 裁判年月日: 昭和41年9月29日 / 結論: 破棄差戻
契約書に特定不動産をもつて代物弁済をなす旨の記載がなされている場合でも、右不動産の売却代金から原判示の貸金債権を精算のうえ残額を債務者に返還する旨の約定が債権者債務者間になされている等原審認定(原判決理由参照)の事情のもとにおいては、前記代物弁済なる記載に依拠して前記契約が代物弁済契約であると認定することは違法である。
事件番号: 昭和35(オ)406 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
証人らが訴訟当事者の一方の妻あるいは妻の兄の関係にあるとしても、その一事によつて右証人らが証人能力を有しないとか、証言の証拠価値が薄弱であるとかは断定できない。
事件番号: 昭和44(オ)175 / 裁判年月日: 昭和45年8月20日 / 結論: 破棄差戻
代物弁済予約形式の債権担保契約を締結し、これを原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由した債権者が、予約完結権を行使したうえ、担保目的実現の手段として本登記をするため、登記上利害関係を有する後順位抵当権者その他目的不動産から優先弁済を受ける地位を有する債権者および目的不動産の第三取得者に対し、その承諾を訴求する場合…
事件番号: 昭和24(オ)201 / 裁判年月日: 昭和25年7月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者が弁済期に債務を履行しない場合に、担保物件の所有権を直ちに債権者に帰属させ、物件を明け渡す旨の合意(代物弁済予約)は、特段の事情がない限り有効である。書面上「売渡担保」との記載があっても、当事者の真意が代物弁済予約にあると認められる場合には、その合意に従った効力が認められる。 第1 事案の概…