判旨
代理権限の有無が争われる場合において、本人が病臥中であっても、諸般の証拠に基づき本人の委任に基づき作成されたと推認できるときは、当該文書は真正に成立したものと認められる。
問題の所在(論点)
代表者が病臥中で直接作成に関与できない状況において、代理人等による文書作成が「名義人の委任に基づくもの」として真正な成立(民事訴訟法第228条第4項参照)を認められるか。
規範
文書の成立の真正については、直接の作成行為のみならず、周囲の客観的事実や証言を総合して、作成名義人の委任に基づく作成であると推認できる場合には、その成立の真正を認めることができる。
重要事実
上告人は、本件貸金にあたり連帯保証および約束手形への白地裏書を行った。上告人側は、手形裏面等の文書作成時、名義人である代表者Gが病臥中であり委任が不可能であった旨を主張し、文書の成立を争った。原審は、証言や印影の成立に争いがない事実を総合し、病臥中のGによる委任に基づき文書が作成されたものと推認して、連帯保証および裏書の事実を認定した。
あてはめ
本件では、約束手形の印影の真正に争いがないことや、複数の証人(D、E、F)の証言および本人の供述が存在する。Gが病臥中であったとしても、これらの証拠を総合すれば、Gの意思に基づく委任があったと推認することは経験則に反しない。したがって、作成行為が物理的に代理人等によってなされたとしても、本人の委任に基づくものとして文書全体の真正な成立が肯定される。
結論
上告人の連帯保証および裏書の事実は適法に認定されており、上告を棄却する。
実務上の射程
実務上、作成名義人が病気等で自署できない場合の文書の真正を争う際、物理的作成不能のみをもって直ちに虚偽と断ずることはできず、委任を推認させる周辺事情(印章の管理状況や当時の人間関係等)の立証が重要となることを示す。
事件番号: 昭和41(オ)1204 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: 棄却
無権限者が機関方式により手形を振り出し本人名義の手形を偽造した場合であつても、右の手形振出が本人から付与された代理権の範囲をこえてなされたものであり、かつ、手形受取人において右無権限者が本人名義で手形を振り出す権限ありと信ずるにつき正当の理由がある等原審認定の事実関係(原判決理由参照)のもとにおいては、本人は、民法第一…