判旨
保証人が借用証書(保証契約書)に署名していれば、たとえ捺印が他人による不法冒捺であったとしても、保証契約の成立を認めることができる。
問題の所在(論点)
借用証書上の印影が本人によるものではなく、他人の不法冒捺によるものである場合、当該保証契約の成立は否定されるか(二段の推定が及ばない場合の契約成立の可否)。
規範
保証契約の成立は、当事者の合意によって決せられる。書面(借用証書等)の作成において、一部の捺印に不備(不法冒捺等)があったとしても、本人が自署するなどして契約締結の意思表示が認められる場合には、特段の事情がない限り、有効に契約が成立する。
重要事実
債権者と主債務者Dとの間の貸金につき、上告人が保証人として記載された借用証書が作成された。上告人は、氏名を自署していたものの、その名下の印影はDが上告人の印顆を不法に冒捺したものであった。上告人は、他4名が保証人になることを条件に保証を承諾したものであり、捺印がない以上保証契約は成立していないと主張して争った。
あてはめ
上告人は、借用証書中の氏名を自署しており、保証意思の客観的な表示が認められる。捺印が主債務者Dによる不法冒捺であったとしても、署名の事実やその他の証拠に基づき、上告人が保証契約を締結する意思があったと認定することは妨げられない。上告人が主張する「他4名の保証を条件とする」旨の事実は認められず、署名をもって有効に保証契約を承諾したものと解される。
結論
印影が不法冒捺であっても、本人の自署等の事実により保証意思が認められる以上、保証契約は有効に成立する。
実務上の射程
民事訴訟法228条4項の「二段の推定」が働かない場面(本人の印影でない場合)であっても、自署があれば、自由心証により文書の成立の真正や契約の成立を認定できることを示す実務上重要な判例である。なお、現行民法446条2項の書面性の要件についても、署名があれば充たされると解する際の論拠となり得る。
事件番号: 昭和34(オ)693 / 裁判年月日: 昭和35年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】文書の真正は、挙示された証拠資料に基づき原審の専権事項として判断されるべきものであり、印顆の盗用等の反証がない限り、その成立を肯定することができる。 第1 事案の概要:上告人は、提出された証拠(甲2、3、4号証の1)が真正に成立したものではないと主張した。具体的には、印章が盗用されたものであること…