本訴請求の当否を判断するためには、かゝる過払の事実が存することを認め得るか否かを判断すれば足りるのであつて、原審は右の事実を認むべき証拠がない旨を判示しているのであるから、進んでこの事実がないことを積極的に認定したことは、蛇足に過ぎない。 論旨はこの蛇足の部分に関する非難であるが、蛇足の判断につき仮りに瑕疵があつたとしても、それだけでは主文に影響を及ぼすものではない。
或る事実の認められないことを判断すれば足りるのに積極的にかかる事実がないことを認定した場合における該認定の瑕疵と判決への影響
判旨
裁判所が主要事実の不在を認定する際、その事実がないことを積極的に認定することは蛇足に過ぎず、当該事実を認める証拠がないと判断すれば足りる。また、裁判所は旧民事訴訟法336条(現207条等参照)に基づき、職権で当事者尋問を行うことができる。
問題の所在(論点)
1. 要件事実を認める証拠がない場合に、その事実が「ない」と積極的に認定することの当否および判決への影響。2. 裁判所が職権で当事者尋問を行うことの適法性。
規範
1. 本訴請求の当否を判断するにあたり、ある要件事実(主要事実)の存否が争点となる場合、裁判所は当該事実の存在を認めるに足りる証拠があるか否かを判断すれば足り、積極的にその事実がないことまでを認定する必要はない。2. 裁判所は、法規に基づき、職権により当事者を尋問し、その結果を事実認定の資料とすることができる。
重要事実
上告人は過払金の返還等を求めて本訴を提起したが、原審は上告人の主張する過払の事実を認める証拠がないと判断した。その際、原審は単に証拠がないとするだけでなく、積極的に過払の事実は存在しなかったと認定した。また、原審は職権で被上告人Bを尋問し、その結果を判断の資料とした。これに対し上告人が、積極的な不存在認定の瑕疵や職権尋問の違法を理由に上告した事案である。
あてはめ
1. 原審は、上告人が主張する過払の事実について、それを認めるべき証拠がないと判示している。本訴請求を棄却するにはこの判断で十分であり、重ねて「過払の事実はなかった」と積極的に認定した部分は蛇足である。したがって、仮にその積極的認定に瑕疵があったとしても、請求を棄却するという主文の結論に影響を及ぼすものではない。2. 当時の民事訴訟法336条において、裁判所は職権で当事者を尋問し得ることが明定されていた。したがって、原審が被上告人を職権尋問し、その結果を判断資料としたことに違法は認められない。
結論
原審の事実認定の手法や職権尋問に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
立証責任を負う当事者が十分な立証を尽くせなかった場合の裁判所の判示のあり方(真偽不明・ノン・リケット)に関する実務上の態度を示す。また、当事者尋問における職権探知的な運用の適法性を確認する際の根拠となる。
事件番号: 昭和33(オ)12 / 裁判年月日: 昭和36年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない表見代理の成否について、裁判所が職権で審理・判断しなかったとしても、審理不尽の違法とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、訴外Eらの行為によって抵当権設定等の法律効果が生じていると争ったが、第一審および控訴審において表見代理の成立を具体的に主張しなかった。原審は、請求原因…