判旨
口頭弁論終結後、裁判官が退廷した後に書記官と当事者一方が法廷に居残ったとしても、その事実のみで直ちに訴訟手続または判決が違法となるわけではない。また、判決書における「控訴人」と「被控訴人」の誤記が判決の結果に影響を及ぼさない場合には、上告理由とはならない。
問題の所在(論点)
1. 判決書における当事者呼称の誤記が、判決の違法事由(上告理由)となるか。 2. 口頭弁論終結後における書記官と一方当事者の接触が、訴訟手続の違法を構成するか。
規範
1. 訴訟手続の違法:口頭弁論終結後の裁判官不在時における書記官と当事者の接触は、それが直ちに公正な審判を妨げる客観的事態に至らない限り、訴訟手続の違法を構成しない。 2. 判決の誤記と破棄事由:判決書に当事者の呼称等の誤記がある場合であっても、それが明らかな誤記であり、かつその誤記に基づいて不利益な判定がなされた形跡がないときは、判決を破棄すべき違法とはならない。
重要事実
上告人(控訴人)は、原審が売買予約の成立は認めたものの本契約の成立を否定した事実認定を不服として上告した。その際、上告人は(1)原判決の事実摘示において「被控訴人」と「控訴人」の誤記がある点、および(2)原審の口頭弁論終結後、係書記官と相手方(被控訴人)代理人が法廷に居残り秘密に会合した事実がある点などを挙げ、訴訟手続または判決の違法を主張した。
あてはめ
1. 誤記について:原判決の事実摘示中、上告人の主張として「被控訴人」と記載されている箇所は、前後の文脈から「控訴人」の誤記であることは明白である。また、この誤記によって上告人に不利益な判定がなされた形跡は認められないため、実質的な違法はない。 2. 書記官との接触について:口頭弁論終結後、裁判官が退廷した後に書記官と一方当事者が法廷に居残ったという事実自体、証拠上認められない。仮にそのような事実があったとしても、それ単独では訴訟手続または判決が当然に違法となる理由にはならない。
結論
本件上告には理由がないため、棄却される。判決書の明らかな誤記や、弁論終結後の書記官との接触のみでは、判決に影響を及ぼすべき違法とは認められない。
事件番号: 昭和28(オ)387 / 裁判年月日: 昭和30年3月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決言渡直後に訴訟手続が中断し送達が遅れたとしても、中断解消後に遅滞なく送達されれば違法ではなく、受継申立の通知を欠いても、受継を認める裁判が送達され上告が可能であったなら原判決は違法とならない。 第1 事案の概要:本件において、判決言渡の直後に訴訟手続が中断したため、判決の送達が法律上不可能な状…
実務上の射程
民事訴訟法における判決の更正(257条)や上告理由(312条以下)の解釈において、形式的な不備や手続上の疑義が「判決に影響を及ぼすべき著しい法令の違反」に該当するかを判断する際の基準となる。特に、実質的な不利益が生じていない誤記や、審理自体に影響しない終結後の挙動については、判決の効力を左右しないことを示している。
事件番号: 昭和34(オ)229 / 裁判年月日: 昭和37年3月16日 / 結論: 棄却
一 訴訟代理人に対して、口頭弁論期日の呼出状の送達がなされなかつたが、同代理人が同期日前に裁判所に出頭して受任事件記録を閲覧した際、同期日の指定を知つたが期日には出頭しなかつたときには、同代理人は同期日に出頭して同期日呼出手続の違法について異議を述べる機会があつたにもかかわらず、これをしなかつたのであるから、右違法につ…
事件番号: 昭和28(オ)1048 / 裁判年月日: 昭和30年9月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】調停において、将来の債務不履行を条件として目的物の売買契約を成立させる旨の合意をすることは、当事者の自由な意思に基づく行為であり、それ自体が権利の行使ではないため権利濫用の問題は生じない。また、前提となる明渡請求等に権利濫用の余地があっても、そのこと自体が直ちに売買の合意という意思表示の効力に影響…
事件番号: 昭和26(オ)549 / 裁判年月日: 昭和28年7月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事上告事件において、上告理由が特例法1号乃至3号に該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張を含まない場合には、上告が棄却される。 第1 事案の概要:本件において上告人が提出した論旨について、最高裁判所は、当時の民事上告事件の審判の特例に関する法律に基づく適法な上告理由を備えているか否かを検討し…
事件番号: 昭和57(オ)1005 / 裁判年月日: 昭和58年11月24日 / 結論: 棄却
第一審の訴訟手続に民訴法一八七条三項違背があつても、控訴審は当然に第一審判決を取り消さなければならないものではない。