第一審の訴訟手続に民訴法一八七条三項違背があつても、控訴審は当然に第一審判決を取り消さなければならないものではない。
第一審における民訴法一八七条三項違背と控訴理由
民訴法187条3項,民訴法384条
判旨
第一審における証人尋問手続に民事訴訟法の規定に違背する瑕疵があったとしても、そのことによって控訴審が当然に第一審判決を取り消さなければならないものではない。
問題の所在(論点)
第一審における証人の再尋問を行わなかった訴訟手続上の瑕疵が、控訴審において第一審判決の当然の取消事由となるか。
規範
第一審の訴訟手続において証人尋問等の手続上の違法があった場合でも、当該違法が当然に判決の結果に影響を及ぼすとまではいえない。したがって、控訴審は、第一審の訴訟手続の違法を理由として、直ちに第一審判決を取り消す必要はない。
重要事実
上告人は、第一審において自らが申請した証人の再尋問が行われなかった措置について、旧民訴法187条3項前段(証人尋問の順序等に関する規定)に違反する旨を主張した。第一審は上告人の請求を認めず、控訴審も第一審の措置を不当とする上告人の主張を排斥したため、上告人は手続の違法(判断遺脱や訴訟手続の違背)を理由に上告した。
事件番号: 昭和55(オ)266 / 裁判年月日: 昭和56年9月24日 / 結論: 破棄差戻
甲が提起した無権代理行為を理由とする土地所有権移転登記の抹消登記手続請求訴訟の控訴審の口頭弁論の終結前に甲が死亡し、無権代理人乙が甲を相続した結果、甲がみずから法律行為をしたのと同様の法律関係を生じたが、甲について訴訟代理人が選任されていたため訴訟承継の手続がとられないまま口頭弁論が終結された場合において、相手方丙がそ…
あてはめ
本件では、第一審が証人の再尋問を行わなかったことが仮に民訴法の規定に違背するものであったとしても、その瑕疵が判決の結論に直結する性質のものとは解されない。控訴審においては、第一審の手続に違法がある場合であっても、事案の性質や証拠関係に照らし、判決の取り消しが常に強制されるわけではない。原審が上告人の主張を排斥し、第一審判決を維持した判断に違法はないと解される。
結論
第一審の訴訟手続に瑕疵があっても、控訴審において当然に第一審判決を取り消さなければならないものではない。上告棄却。
実務上の射程
第一審の手続違背が控訴審での取り消し事由となるか(民訴法306条等の解釈)に関し、手続違背が直ちに判決の取り消しに直結しないという原則を確認する際に用いる。ただし、判決に影響を及ぼすことが明らかな重大な手続違背がある場合には、依然として取消事由となり得る点に注意が必要である。
事件番号: 昭和28(オ)808 / 裁判年月日: 昭和30年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】要素の錯誤による無効主張に対し、裁判所が錯誤の存在自体を否定した場合、併せて示された「重過失の有無」に関する判断は、仮定的前提に基づく不要な説示にすぎず、判決に影響を及ぼさない。 第1 事案の概要:上告人の養母Dは、本件物件を被上告人に売却したが、上告人は当該売買に要素の錯誤(民法95条)があると…
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【結論(判旨の要点)】事実認定において、相反する当事者の陳述や証人の証言から、いずれを信用して採用し、いずれを排斥するかは、特段の事情がない限り裁判所の自由な心証に委ねられる。 第1 事案の概要:上告人は、消費貸借の弁済期に関する認定、および被上告人による弁済の提供の事実認定に際し、原審が特定の陳述を信用し、他を排斥し…
事件番号: 昭和27(オ)1125 / 裁判年月日: 昭和29年2月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が「民事上告事件の審判の特例に関する法律」所定の事由に該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張を含まない場合、上告は棄却される。 第1 事案の概要:上告人が最高裁判所に対し上告を提起したが、その上告理由(論旨)が、当時の「民事上告事件の審判の特例に関する法律」1条1号から3号までのいずれ…