甲が提起した無権代理行為を理由とする土地所有権移転登記の抹消登記手続請求訴訟の控訴審の口頭弁論の終結前に甲が死亡し、無権代理人乙が甲を相続した結果、甲がみずから法律行為をしたのと同様の法律関係を生じたが、甲について訴訟代理人が選任されていたため訴訟承継の手続がとられないまま口頭弁論が終結された場合において、相手方丙がその責めに帰すべき事由によらないで右相続の事実を知らなかつたため、これに基づく攻撃防禦方法を提出せず、これを提出すれば勝訴する可能性があると認めるべき判示のような事実関係が存し、かつ、丙が後訴で右相続の事実を主張してその権利の回復をはかることができないことにもなる関係にあるという事情のもとで、右攻撃防禦方法について更に審理判断を求める必要があることを理由にして丙から弁論再開申請があつたにもかかわらず、控訴裁判所が弁論を再開しないで丙敗訴の判決をすることは、違法である。
弁論再開をしないで判決をした控訴裁判所の措置が違法であるとされた事例
民訴法133条
判旨
弁論の再開は裁判所の裁量に属するが、判決の結果に影響を及ぼす重要な攻撃防御方法が、当事者の責に帰すべからざる事由により提出できなかった場合に、再開を拒むことは手続的正義に反し、裁量権を逸脱した違法となる。
問題の所在(論点)
一旦終結した弁論を再開すべき裁量上の義務が生じる「特段の事由」の存否、およびその判断基準が問題となる。
規範
弁論を再開するか否かは裁判所の裁量に属し、当事者は権利としてこれを請求できない。しかし、その裁量権も絶対無制限ではなく、弁論を再開して当事者に更に攻撃防御の方法を提出する機会を与えることが、民事訴訟における手続的正義の要求に照らして明らかに必要と認められる「特段の事由」がある場合には、裁判所は弁論を再開すべき義務を負う。これを怠りそのまま判決をすることは違法である。
重要事実
事件番号: 昭和57(オ)1005 / 裁判年月日: 昭和58年11月24日 / 結論: 棄却
第一審の訴訟手続に民訴法一八七条三項違背があつても、控訴審は当然に第一審判決を取り消さなければならないものではない。
本件不動産の所有者Dが提起した抹消登記等請求訴訟において、被告(上告人)は表見代理等の抗弁を提出していた。Dが原審の弁論終結前に死亡したが、訴訟代理人がいたため手続は中断せず弁論が終結した。被告は、判決言渡前にDの死亡と、相続人(被上告人)がDの生存中に行った無権代理行為を知り、相続によって被上告人が本人Dの地位を継承した結果、表見代理の要件(授権表示や基本代理権)を満たす可能性があるとして弁論再開を申し立てたが、原審はこれを拒み判決を言い渡した。
あてはめ
まず、被告がDの死亡を弁論終結前に知らなかったことには責に帰すべき事由がない。また、相続により無権代理人が本人の地位を承継した事実は、判決の結果に影響を及ぼす可能性のある重要な攻撃防御方法である。さらに、この主張を提出する機会を与えられないまま敗訴判決が確定すれば、被告は既判力により後訴で登記の回復を争うことができなくなる。したがって、このような状況下で再開を拒むことは、手続的正義の要求に明らかに反するといえる。
結論
裁判所は弁論を再開して主張の機会を与える義務があり、これをせずに判決した原審には、弁論再開についての訴訟手続の違反(裁量権の逸脱)がある。
実務上の射程
裁判所の裁量行為について、手続的正義の観点から裁量権の限界を画した重要な判例である。答案上は、当事者が予測できなかった重大な後発的事実や新証拠を提出しようとする場面で、裁量の逸脱を基礎づける論拠(不利益の甚大さ、無過失性)として活用する。
事件番号: 昭和54(オ)1166 / 裁判年月日: 昭和55年7月15日 / 結論: その他
土地所有権に基づく土地明渡請求事件において、被告が抗弁として右土地の買受けを主張するとともに、事情として右土地を買受けの時まで長期にわたり賃借していた旨陳述し、原告も賃貸の事実を認めていたなどの訴訟の経過があるにかかわらず、右の売買の無効を判断しただけで、右の陳述の趣旨を釈明せず、占有権原の存否について審理を尽くさない…
事件番号: 昭和63(オ)115 / 裁判年月日: 平成2年9月27日 / 結論: 棄却
共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて分割協議を成立させることができる。
事件番号: 昭和37(オ)328 / 裁判年月日: 昭和38年8月30日 / 結論: 棄却
一 裁判所が当事者の弁論再開の申請を採用しなかつたため、新たな証拠の提出ができなかつたとしても、証拠提出を不当に制限したことにはならない(昭和二三年(オ)第七号、同年四月一七日第二小法廷判決、民集二巻四号一〇四頁参照)。 二 公務員の職務執行に基づく損害については、国家または公共団体がその責任を負い、当該公務員は被害者…
事件番号: 昭和34(オ)632 / 裁判年月日: 昭和35年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判上の自白の取消しには、自白が真実に反し、かつ錯誤に基づいたものであることの証明を要するが、自白が真実に反することが証明された場合には、特段の事情がない限り、錯誤によるものと推認される。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件不動産の所有権に基づき、上告人(被告)らに対して所有権移転登記の抹…