共同相続人は、既に成立している遺産分割協議につき、その全部又は一部を全員の合意により解除した上、改めて分割協議を成立させることができる。
遺産分割協議と合意解除及び再分割協議の可否
民法545条,民法907条,民法909条
判旨
共同相続人の全員が、既に成立している遺産分割協議の全部又は一部を合意により解除した上で、改めて遺産分割協議をすることは法律上当然に可能である。
問題の所在(論点)
一旦成立した遺産分割協議を、共同相続人全員の合意によって解除し、再度遺産分割協議を行うことができるか(遺産分割協議の合意解除の可否)。
規範
遺産分割協議は共同相続人間における一種の契約である。したがって、契約自由の原則に基づき、共同相続人の全員が合意する限り、既成立の遺産分割協議の全部又は一部を合意解除し、改めて再分割協議をすることは法律上当然に妨げられない。ただし、これにより第三者の権利を害することはできない(民法545条1項但書の法理)。
重要事実
本件において共同相続人である当事者らは、一度は遺産分割協議を成立させていた。しかし、後に上告人が「遺産分割協議の修正」を主張した。この修正の主張は、実質的には既成の協議を共同相続人全員の合意によって解除し、改めて遺産分割を行うことを指すものであったが、原審はこのような合意解除と再分割は法律上許されないものとして上告人の主張を排斥した。なお、記録上、実際に全員の合意による解除がなされたと認めるに足りる証拠は存在しなかった。
事件番号: 昭和55(オ)266 / 裁判年月日: 昭和56年9月24日 / 結論: 破棄差戻
甲が提起した無権代理行為を理由とする土地所有権移転登記の抹消登記手続請求訴訟の控訴審の口頭弁論の終結前に甲が死亡し、無権代理人乙が甲を相続した結果、甲がみずから法律行為をしたのと同様の法律関係を生じたが、甲について訴訟代理人が選任されていたため訴訟承継の手続がとられないまま口頭弁論が終結された場合において、相手方丙がそ…
あてはめ
遺産分割協議の「修正」は、法的には既成の協議の合意解除と再分割協議を意味すると解される。遺産分割協議も契約の一種である以上、全員の合意があればこれを解消し、新たな合意を形成することは可能である。したがって、原審が合意解除を法律上一切許されないとした点は解釈を誤っている。もっとも、本件においては、上告人が主張する「合意解除および再分割の事実」を裏付ける客観的な証拠が認められない。したがって、実体上の合意が成立していない以上、上告人の主張を退けた結論自体は正当である。
結論
共同相続人全員による遺産分割協議の合意解除および再分割協議は法律上有効であるが、本件ではその事実を認める証拠がないため、上告を棄却する。
実務上の射程
1.遺産分割のやり直しに関するリーディングケース。2.「合意解除」を認めるものであり、債務不履行を理由とする「法定解除」は認められない(最判平元.2.9)点と区別すること。3.答案上は、遡及効による第三者保護(545条1項但書)や、再分割による課税上のリスク(贈与税の発生可能性)に留意して論述を補強する。
事件番号: 平成16(オ)402 / 裁判年月日: 平成17年12月15日 / 結論: 破棄差戻
甲名義の不動産につき,甲から乙,乙からYが順次相続したことを原因として直接Yに対して所有権移転登記がされている場合に,甲の相続につき共同相続人Xが存在するときは,Yが上記不動産につき共有持分権を有しているとしても,Xは,Yに対し,上記不動産の共有持分権に基づき,上記登記の全部抹消を求めることができる。
事件番号: 昭和53(オ)1119 / 裁判年月日: 昭和59年9月20日 / 結論: 棄却
不動産の売買に基づく所有権移転登記手続請求権を被保全権利として処分禁止の仮処分を得た仮処分債権者は、売買が無効であつても、右売買によつて当該不動産の占有を開始し仮処分後にこれを時効により取得したときは、時効の完成したのちに右不動産を仮処分債務者から取得した第三者に対し、右仮処分が取得時効に基づく所有権移転登記手続請求権…
事件番号: 昭和52(オ)583 / 裁判年月日: 昭和52年12月23日 / 結論: 破棄差戻
対価として土地一〇〇〇坪の譲渡を受けるという約定のもとに、自動車学校の用地の整地、練習用コース周囲の明渠の設置及び排水の諸工事を請け負つた者が期日までに約一〇分の二程度の工事しかせず、全工事完成の見込みがたたなくなつたので、注文者が残工事部分の打切りを申し入れるとともに、既に請負人に譲渡ずみの土地五〇〇坪全部の返還を要…
事件番号: 昭和57(オ)1005 / 裁判年月日: 昭和58年11月24日 / 結論: 棄却
第一審の訴訟手続に民訴法一八七条三項違背があつても、控訴審は当然に第一審判決を取り消さなければならないものではない。