一 裁判所が当事者の弁論再開の申請を採用しなかつたため、新たな証拠の提出ができなかつたとしても、証拠提出を不当に制限したことにはならない(昭和二三年(オ)第七号、同年四月一七日第二小法廷判決、民集二巻四号一〇四頁参照)。 二 公務員の職務執行に基づく損害については、国家または公共団体がその責任を負い、当該公務員は被害者に対し、その責任を負担しない。
一 弁論再開の不許と証拠提出の不当制限 二 国家賠償と賠償責任の負担者
民訴法133条,民訴法137条,国家賠償法1条,民法709条
判旨
弁論の再開(民事訴訟法153条1項)は、裁判所が事件が裁判をなすに熟したと判断した後は、裁判所の専権事項に属する。したがって、当事者の再開申請は裁判所の職権発動を促すものにすぎず、これを却下しても違法ではない。
問題の所在(論点)
裁判所が弁論を終結した後、当事者からなされた弁論再開の申請を却下し、証拠調べを行わずに判決を言い渡すことは、民事訴訟法上の職権濫用または証拠提出の不当な制限(民事訴訟法297条、157条等参照)に当たるか。
規範
一度閉じられた弁論を再開するか否かは、裁判所の専権事項である(民事訴訟法153条1項)。当事者による弁論再開の申請は、裁判所の右専権の発動を促す趣旨の申出にすぎない。裁判所が事件が裁判をなすに熟するものと認めて弁論を終結した後は、再開申請を採用しなくとも適法であり、新たな証拠提出が制限されたとしても不当な制限には当たらない。
重要事実
控訴審において、昭和36年12月20日に口頭弁論が終結され、判決言渡期日が指定された。その後、上告人(控訴人)は判決言渡前の昭和37年1月17日に、口頭弁論再開の申立書を提出し、新たな証人の尋問申請を行った。しかし、原審(控訴院)は弁論を再開することなく、当初の指定通りに判決を言い渡した。上告人は、この再開却下および証拠提出の制限が違法であると主張して上告した。
事件番号: 昭和37(オ)1241 / 裁判年月日: 昭和38年10月15日 / 結論: 棄却
訴訟代理の委任はなされたが、まだ代理委任状が裁判所に提出されていなかつた場合、当事者本人に対する適式な期日の呼出にかかわらず当該当事者が不出頭のときに、裁判所が民訴法第一三八条によつて相手方に弁論を命じたからといつて、何ら違法はない。
あてはめ
裁判所は、昭和36年12月20日の期日において双方代理人が出頭して弁論を尽くしたことを受け、事件が裁判をなすに熟したと判断して弁論を終結している。この時点で裁判所には心証が形成されており、その後の再開申請は裁判所の専権に委ねられる。本件において、弁論終結後の申請を却下したことは裁判所の合理的な裁量の範囲内であり、適法に終結した後の証拠提出を認めないことは、証拠提出の機会を不当に奪ったものとは解されない。
結論
裁判所が弁論再開の申請を採用しなかったとしても、何ら違法の措置とはいえず、上告は棄却される。
実務上の射程
弁論再開が裁判所の「裁量」であることを示した基本的判例である。答案上は、当事者が弁論終結後に重要な証拠を提出しようとした場面で、裁判所の再開義務を否定する根拠として用いる。ただし、判例理論の発展により、信義則上または適時提出主義の観点から再開しないことが著しく不当な場合には裁量権の逸脱となり得ることには留意が必要である。
事件番号: 昭和27(オ)887 / 裁判年月日: 昭和29年7月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所がいったん採択した証拠決定であっても、当事者が予定された期日までに必要な手続を完了せず、かつその遅延に正当な理由がない場合には、適時提出主義の趣旨に照らし、当該決定を取り消すことができる。 第1 事案の概要:原審において、裁判所は昭和27年5月13日の口頭弁論にて上告代理人の証拠申請を許容す…
事件番号: 昭和37(オ)744 / 裁判年月日: 昭和38年4月9日 / 結論: 棄却
弁論の再開を命ずる否とは裁判所の専権事項であり、第一審判決がいわゆる欠席判決である 場合にも、結論を異にすべきものではない。
事件番号: 昭和32(オ)488 / 裁判年月日: 昭和34年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁論の再開の是非は裁判所の職権に属する事項であり、裁判所の合理的な裁量によって決定される。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人が建物の建築を開始する以前から係争地を占有していたと主張したが、原審はこれを認めなかった。上告人は、本人再尋問の却下や、結了した口頭弁論を再開しなかった原審の判断には違法…
事件番号: 昭和32(オ)543 / 裁判年月日: 昭和35年6月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所は、訴訟が判決をなすに熟すると認めるときは職権で弁論を終結させることができ、一度終結した弁論を再開するか否かは裁判所の合理的な裁量に委ねられる。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)において新たな主張および証拠(新主張・新証拠)の提出を予定していたが、原審裁判所は訴訟が裁判をなすに熟し…