訴訟代理の委任はなされたが、まだ代理委任状が裁判所に提出されていなかつた場合、当事者本人に対する適式な期日の呼出にかかわらず当該当事者が不出頭のときに、裁判所が民訴法第一三八条によつて相手方に弁論を命じたからといつて、何ら違法はない。
訴訟代理委任状の未提出と民訴法第一三八条の適用。
民訴法138条
判旨
口頭弁論終結後の弁論再開の可否は、裁判所の職権に属する事項であり、その自由裁量によって決し得るものである。
問題の所在(論点)
口頭弁論を終結した後に当事者からなされた弁論再開の申請に対し、裁判所がこれを拒否し判決をすることは、裁判所の裁量権の範囲内として許容されるか。
規範
一旦終結した口頭弁論を再開するか否かは、受訴裁判所の自由裁量に委ねられている。したがって、当事者からの弁論再開申請に対し、裁判所がこれを命じなかったとしても、直ちに違法となるものではない。
重要事実
上告人(控訴人)は、原審の第1回口頭弁論期日において、訴訟代理委任状が裁判所に提出されておらず、かつ上告人本人への適式な期日呼出しがあったにもかかわらず、当該期日に出頭しなかった。原審は控訴状の陳述を擬制して弁論を進行させ、その後弁論を終結した。上告人は弁論再開の申請を行ったが、原審はこれを認めず判決を言い渡したため、上告人が三審制度の無視や真実発見の拒否であるとして上告した。
事件番号: 昭和37(オ)328 / 裁判年月日: 昭和38年8月30日 / 結論: 棄却
一 裁判所が当事者の弁論再開の申請を採用しなかつたため、新たな証拠の提出ができなかつたとしても、証拠提出を不当に制限したことにはならない(昭和二三年(オ)第七号、同年四月一七日第二小法廷判決、民集二巻四号一〇四頁参照)。 二 公務員の職務執行に基づく損害については、国家または公共団体がその責任を負い、当該公務員は被害者…
あてはめ
本件において、原審の第1回口頭弁論期日の呼出しは本人に対し適式になされており、訴訟代理権の存在も確認できない状態で上告人が不出頭であった以上、手続に違法はない。弁論再開の是非は裁判所の広範な裁量に属する事項である。原審が申請を採用せず弁論を再開しなかった判断は、裁判所に与えられた裁量の範囲内のものであり、真実発見を拒否したといった上告人の主張は独自の論理にすぎず、違法とは認められない。
結論
弁論再開の可否は裁判所の自由裁量に属するため、原審が再開を命じなかったことに違法はなく、本件上告は棄却される。
実務上の射程
裁判所の弁論再開義務を否定する判例として、手続的裁量を論じる際に引用する。当事者に十分な弁論の機会が与えられていた(適式な呼出しがあった)ことが裁量行使の適法性を支える一要素となる。ただし、信義則違反や適正手続に反する顕著な事情がある場合には裁量権の逸脱・濫用が問題となり得るが、本判決は原則として広範な裁量を認める立場を明示している。
事件番号: 昭和47(オ)1103 / 裁判年月日: 昭和48年11月30日 / 結論: 棄却
適法な呼出を受けながら当事者双方が口頭弁論期日に出頭しない場合に、本人尋問の採用を取消す決定が言渡されたときは、右決定の告知は、当事者双方に対してその効力を生ずる。
事件番号: 昭和32(オ)488 / 裁判年月日: 昭和34年3月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】弁論の再開の是非は裁判所の職権に属する事項であり、裁判所の合理的な裁量によって決定される。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人が建物の建築を開始する以前から係争地を占有していたと主張したが、原審はこれを認めなかった。上告人は、本人再尋問の却下や、結了した口頭弁論を再開しなかった原審の判断には違法…
事件番号: 昭和27(オ)887 / 裁判年月日: 昭和29年7月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所がいったん採択した証拠決定であっても、当事者が予定された期日までに必要な手続を完了せず、かつその遅延に正当な理由がない場合には、適時提出主義の趣旨に照らし、当該決定を取り消すことができる。 第1 事案の概要:原審において、裁判所は昭和27年5月13日の口頭弁論にて上告代理人の証拠申請を許容す…
事件番号: 昭和38(オ)412 / 裁判年月日: 昭和39年8月13日 / 結論: 棄却
不動産所有権を取得したが本登記手続を経ない仮登記権利者は、右不動産上の抵当権者に対し被担保債務が弁済されたことを理由に当該抵当権設定登記の抹消登記手続を請求し得ない。