判旨
裁判所がいったん採択した証拠決定であっても、当事者が予定された期日までに必要な手続を完了せず、かつその遅延に正当な理由がない場合には、適時提出主義の趣旨に照らし、当該決定を取り消すことができる。
問題の所在(論点)
裁判所が一度行った証拠決定を、当事者の手続懈怠を理由に取り消すことが、適時提出主義(民事訴訟法157条1項参照)の観点から適法か。
規範
裁判所は、証拠調べの開始前に当事者がなすべき手続を怠り、そのことに故意または重大な過失がないとの主張立証もない場合には、民事訴訟法における適時提出主義(現行法157条、旧法139条)の趣旨に照らし、既になされた証拠決定を取り消すことが許容される。
重要事実
原審において、裁判所は昭和27年5月13日の口頭弁論にて上告代理人の証拠申請を許容する証拠決定を行った。しかし、上告代理人は証拠調べが予定されていた同年8月14日の期日以前に完了すべき手続を完了していなかった。また、この手続未了が故意または重大な過失によるものではないとの主張立証もなされなかった。そのため、原審は同日の期日において先の証拠決定を取り消し、証拠調べを施行しなかった。
あてはめ
本件では、証拠調べの施行が予定されていた期日までに、申請当事者側が必要な準備手続を完了していなかった。このような状況下で、手続未了について故意・重過失がないことの疎明もない以上、裁判所がそのまま証拠調べを維持することは訴訟の著しい遅延を招くおそれがある。したがって、旧民訴法139条(現157条)の趣旨である「訴訟の完結を遅延させることを目的とする等の攻撃防御方法の却下」の枠組みに基づき、証拠決定を取り消して証拠調べを行わないことは相当と評価される。
結論
一度なされた証拠決定であっても、当事者が理由なく必要な準備を怠った場合には、これを取り消すことができるため、原審の措置に違法はない。
事件番号: 昭和37(オ)917 / 裁判年月日: 昭和38年3月15日 / 結論: 棄却
その主張を立証する目的で申請された証拠調が一部施行された後でも、当事者の主張を時機に後れて提出されたものとして却下できないわけではない。
実務上の射程
適時提出主義(157条)に基づく攻撃防御方法の却下の一場面として、証拠決定の取消し(181条、185条参照)を正当化する際の規範として活用できる。当事者の非協力的な態度により訴訟遅延が生じる場合に、裁判所の訴訟指揮権の行使として証拠を排除する論拠となる。
事件番号: 昭和37(オ)328 / 裁判年月日: 昭和38年8月30日 / 結論: 棄却
一 裁判所が当事者の弁論再開の申請を採用しなかつたため、新たな証拠の提出ができなかつたとしても、証拠提出を不当に制限したことにはならない(昭和二三年(オ)第七号、同年四月一七日第二小法廷判決、民集二巻四号一〇四頁参照)。 二 公務員の職務執行に基づく損害については、国家または公共団体がその責任を負い、当該公務員は被害者…
事件番号: 昭和34(オ)870 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】文書提出命令の申立てにおいて提出義務の原因についての陳述が欠けている場合、裁判所はこれを黙示的に排斥することができる。 第1 事案の概要:上告人(控訴人)の代理人は、原審において文書提出命令の申立てを行った。しかし、記録上、当該申立てにおいて提出義務の原因(提出義務を基礎づける具体的法律事実)につ…
事件番号: 昭和57(オ)1005 / 裁判年月日: 昭和58年11月24日 / 結論: 棄却
第一審の訴訟手続に民訴法一八七条三項違背があつても、控訴審は当然に第一審判決を取り消さなければならないものではない。