その主張を立証する目的で申請された証拠調が一部施行された後でも、当事者の主張を時機に後れて提出されたものとして却下できないわけではない。
証拠調が一部施行された主張を時機に後れて提出されたものとして却下することの可否。
民訴法139条
判旨
当事者が故意または重大な過失により時機に遅れて提出した攻撃防御方法が、訴訟の完結を遅延させると認められるときは、たとえその主張を立証するための証拠調べが一部既に行われていたとしても、裁判所はこれを却下することができる。
問題の所在(論点)
民事訴訟法157条1項において、却下対象となる攻撃防御方法について既に一部の証拠調べが行われている場合であっても、「訴訟の完結を遅延させる」ものとして却下することができるか。
規範
民事訴訟法157条1項(旧139条)に基づく時機に遅れた攻撃防御方法の却下要件は、①故意または重大な過失により、②時機に遅れて提出されたこと、③それにより訴訟の完結を遅延させることである。ここで「訴訟の完結を遅延させる」とは、その主張が提出されなかった場合と比較して、審理を継続する必要が生じ、結審が遅れる客観的状態を指す。既に一部の証拠調べがなされている場合であっても、なお当該主張の成否を判断するために追加の証拠調べを要し、それによって訴訟が長引くと認められる限り、同要件を充足する。
重要事実
上告人(被告)は、原審(控訴審)において新たな主張を提出した。しかし、その主張は一審以来の訴訟経過に照らせば、もっと早期に提出できたものであり、故意または重大な過失によって提出が遅れたものと判断された。また、上告人がその主張を立証するために提出した証拠のうち、一部については既に証拠調べが実施されていた。原審は、当該主張を審理するためにはさらなる証拠調べが必要であり、結審が遅れると判断して、これを時機に遅れた攻撃防御方法として却下した。これに対し、上告人が「一部証拠調べが済んでいる以上、却下は許されない」と主張して上告した事案である。
事件番号: 昭和27(オ)887 / 裁判年月日: 昭和29年7月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所がいったん採択した証拠決定であっても、当事者が予定された期日までに必要な手続を完了せず、かつその遅延に正当な理由がない場合には、適時提出主義の趣旨に照らし、当該決定を取り消すことができる。 第1 事案の概要:原審において、裁判所は昭和27年5月13日の口頭弁論にて上告代理人の証拠申請を許容す…
あてはめ
本件において、上告人の主張は故意または重大な過失により時機に遅れて提出されたものである。上告人は、一部の証拠調べが既になされていることを理由に却下を免れるべきと主張するが、原判決は当該主張の判断のために「なお証拠調べを必要とする」と認定している。この場合、新たな主張を維持し判断を下すためには更なる審理期間を要することになるため、当該主張を却下しない場合に比べて「訴訟の完結を遅延せしめる」といえる。したがって、一部証拠調べが施行済みであっても、なお却下要件を充足すると解される。
結論
一部の証拠調べが既になされていても、なお追加の証拠調べを要し訴訟完結を遅延させると認められるときは、時機に遅れた攻撃防御方法として却下できる。
実務上の射程
司法試験においては、民訴法157条の却下要件を検討する際の「遅延」の判断基準として活用できる。特に、提出が遅れた攻撃防御方法について裁判所がうっかり証拠調べを始めてしまった後でも、依然として却下が可能であることを示す判例であり、却下の可否が争われる問題において「証拠調べの着手」が却下を妨げる決定的理由にならないことを論証する際に有用である。
事件番号: 昭和38(オ)157 / 裁判年月日: 昭和41年3月18日 / 結論: 棄却
未登記の建物の所有者甲が、乙にその所有権を移転する意思がないのに、乙の承諾を得て、右建物について乙名義の所有権保存登記を経由したときは、民法第九四条第二項を類推適用して、甲は、乙が右建物の所有権を取得しなかつたことをもつて、善意の第三者に対抗することができないものと解すべきである。
事件番号: 昭和31(オ)787 / 裁判年月日: 昭和33年8月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判決に影響を及ぼさない事実認定の過誤や、傍論にすぎない不要な説示の違法を主張する上告理由は、原判決の破棄事由には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が認定した事実のうち「上告人が訴外Bのために家屋を移築すべき宅地の借受交渉を被上告人に対して行った」とする点に事実誤認があると主張した。ま…
事件番号: 昭和35(オ)1197 / 裁判年月日: 昭和38年2月22日 / 結論: 棄却
一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。 二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。 三 …
事件番号: 昭和27(オ)1125 / 裁判年月日: 昭和29年2月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告理由が「民事上告事件の審判の特例に関する法律」所定の事由に該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張を含まない場合、上告は棄却される。 第1 事案の概要:上告人が最高裁判所に対し上告を提起したが、その上告理由(論旨)が、当時の「民事上告事件の審判の特例に関する法律」1条1号から3号までのいずれ…