判旨
文書提出命令の申立てにおいて提出義務の原因についての陳述が欠けている場合、裁判所はこれを黙示的に排斥することができる。
問題の所在(論点)
文書提出命令の申立てにおいて、提出義務の原因に関する陳述が欠けている場合に、裁判所が明示的な判断を示さず黙示的にこれを排斥することは適法か。
規範
文書提出命令の申立てがなされた場合、申立人は文書の表示や趣旨に加え、当該文書の提出義務の原因(民事訴訟法220条各号所定の事由)を具体的に陳述しなければならない。これらの要件を欠く不適法な申立てに対しては、裁判所は明示的な決定を経ることなく、口頭弁論の経過に照らして暗黙にこれを排斥することが許される。
重要事実
上告人(控訴人)の代理人は、原審において文書提出命令の申立てを行った。しかし、記録上、当該申立てにおいて提出義務の原因(提出義務を基礎づける具体的法律事実)について何ら陳述がなされた形跡がなかった。原審裁判所は、この申立てに対し明示的な却下決定等を行わないまま訴訟手続を進め、判決に至った。
あてはめ
本件における文書提出命令の申立てでは、提出義務の原因について何ら陳述がなされていない。これは申立ての適法要件を欠くものである。原審の口頭弁論の経過をみるに、裁判所がこの不備のある申立てをあえて取り上げず手続を続行したことは、当該申立てを暗黙に排斥したものと解される。したがって、原審の手続に違法はない。
結論
文書提出命令の申立てに提出義務の原因の陳述がない以上、原審がこれを暗黙に排斥したことに違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
証拠決定の裁判は、不採用とする場合には必ずしも決定の形式を要さず、黙示的な却下(排斥)が認められるという実務上の取り扱いを確認するものである。特に文書提出命令の申立てにおいて、提出義務の主張を欠く等の形式的不備がある場合の処理指針として機能する。
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