判旨
訴訟行為をさせることを主たる目的としてなされた財産の譲渡(信託)は、信託法10条(現行法11条)により無効であり、譲受人は当該財産の所有権取得を主張して仮処分等の権利行使をすることはできない。
問題の所在(論点)
訴訟行為をさせることを主たる目的とする財産の譲渡が、信託法上の訴訟信託の禁止に抵触し無効となるか、およびその無効が仮処分申請の成否に影響するか。
規範
訴訟行為をさせることを主たる目的として信託がなされた場合、その信託は信託法11条(旧法10条)の規定に基づき無効となる。この無効は、形式的に所有権移転の体裁を整えていても、実質的な目的が訴訟の遂行にある場合に適用される。
重要事実
上告人は、訴外Dから本件土地およびその地上の立木を贈与されたとして、所有権移転登記を経由した上で、本件土地に関する仮処分申請を行った。しかし、原審によれば、この贈与(信託)は、Dが上告人に訴訟行為を行わせることを主たる目的としてなされたものであった。
あてはめ
本件における上告人への所有権移転は、訴外Dが上告人に訴訟を遂行させる目的でなされた信託行為であると認められる。そうであれば、当該信託は信託法11条(旧法10条)に違反し無効である。したがって、上告人は本件土地の所有権を取得したとはいえず、仮処分を申し立てるための被保全権利についての疎明がないことになる。被上告人の占有権限の有無を検討するまでもなく、上告人の請求は根拠を欠く。
結論
訴訟信託に該当する贈与は無効であり、上告人は所有権取得を主張できないため、本件仮処分申請を排斥した原判決は正当である。
実務上の射程
司法試験において、当事者適格の潜脱や弁護士法72条違反が疑われるような権利譲渡がなされた場合、本判例を根拠に信託法11条による無効を主張し、請求の前提となる権利帰属を否定する論法として活用できる。民事訴訟法上の「訴訟信託の禁止」の実体法的な根拠を示す重要な判例である。
事件番号: 昭和24(オ)12 / 裁判年月日: 昭和26年4月19日 / 結論: 棄却
仮処分の申請において、被保全権利の疏明がなく、裁判所が保証をもつて疏明に代えることを不適当と考えるときは、仮処分の理由の存否を判断しないで仮処分の申請を却下することができる。
事件番号: 昭和41(オ)1234 / 裁判年月日: 昭和44年12月19日 / 結論: 棄却
不動産の買主がその売主に対してなしたいわゆる処分禁止の仮処分がある場合に、右不動産の他の買主が同一不動産について第二次の処分禁止の仮処分をすることは妨げられないが、第一次仮処分の債権者が、被保全権利の実現として、右売買契約に基づく所有権移転登記を経由したときは、第二次仮処分の債権者は、自己の仮処分の効力を主張して右所有…