判旨
仮の地位を定める仮処分であっても、本案訴訟で勝訴を得たのと同様に、完全に、かつ原状回復が不可能な方法で債権者に満足を与える処分は許されない。
問題の所在(論点)
仮の地位を定める仮処分(民事保全法23条2項参照)において、本案勝訴と同様の効果を生じさせ、かつ事後の原状回復が不可能な「満足的仮処分」が許容されるか。
規範
仮処分命令は、暫定的な措置であるという性質上、本案訴訟の確定判決による執行と同等の状態を現出し、かつ、後に本案で敗訴した場合に原状回復が全く不可能となるような「完全かつ不可逆的な満足」を債権者に与えるものであってはならない。
重要事実
上告人は、仮の地位を定める仮処分において、本案判決を得た場合と全く同様の満足を得られるような処分の発令を求めた。しかし、その内容は原状回復が不可能な態様で債権者の権利を充足させるものであった(詳細な具体的権利関係は判決文からは不明)。
あてはめ
本件で求められている処分は、本案訴訟において勝訴の判決を得たと全く同様の結果をもたらすものである。加えて、その内容は完全に、かつ原状回復を為し得ないやり方で債権者に満足を与えるものである。このような処分は、仮処分の暫定性に反し、係争物に関する仮処分か仮の地位を定める仮処分かを問わず許容されない。
結論
完全に、かつ原状回復ができない形で債権者に満足を与える仮処分は許されないため、上告を棄却する。
実務上の射程
満足的仮処分の限界を画した判例である。建物収去明渡しや金銭支払いなど、事実上の満足を与える仮処分であっても、事後の原状回復(建物再築や返還)の可能性や保全の必要性を厳格に検討すべきとする答案構成の根拠となる。
事件番号: 昭和23(テ)2 / 裁判年月日: 昭和28年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】占有権を被保全権利とする仮処分申請において、債権者による占有の事実に疎明がない場合には、当該申請は却下されるべきである。事実認定の基礎となる疎明資料の取捨選択は、特段の事情がない限り事実審裁判所の合理的な裁量に属する。 第1 事案の概要:再上告人(債権者)は、被再上告人(債務者)が係争土地に対する…