上告人の本訴請求の要旨が農地の買収基準時たる昭和二〇年一一月二三日において本件農地につき上告人の賃借権が存在したことの確認を求めるにあつたこと、並びに即時確定の法律上の利益の一つとして被上告人等に対し債務不履行又は不法行為を理由として精神上若しくは物質上の損害賠償の請求を為すためであると主張したことは記録上明白であり、何等釈明を必要とすべき余地は存しない。そして過去の法律関係の存否が現在の法律関係の存否に影響を及ぼす場合にあつては、直ちにその現在の法律関係そのものの存否につき確認の訴を提起すべきであり、その前提たるに過ぎない過去の法律関係の存否につき確認の訴を許容すべきではない。されば、原判決には所論のような審理不尽の違法は認められない。
過去の法律関係の確認の訴の利益
判旨
過去の法律関係が現在の法律関係に影響を及ぼす場合であっても、現在の法律関係の存否を直接争うべきであり、その前提となる過去の法律関係の確認を求める訴えは、確認の利益を欠き不適法である。
問題の所在(論点)
損害賠償請求という現在の法律関係の前提となるにすぎない、過去の一定時点における賃借権の存否の確認を求める訴えに、確認の利益が認められるか。
規範
確認の訴えは、現在の権利又は法律関係の存否を対象とすべきものであり、過去の法律関係は原則としてその対象とはならない。例外的に過去の法律関係の存否が現在の法律関係に影響を及ぼす場合であっても、直ちに現在の法律関係そのものの存否につき確認の訴えを提起すべきであり、その前提たるにすぎない過去の法律関係の存否につき確認の訴えを許容すべきではない。
重要事実
上告人は、農地の買収基準時である昭和20年11月23日時点において、本件農地に上告人の賃借権が存在したことの確認を求めて訴えを提起した。上告人は、即時確定の法律上の利益として、被上告人らに対し債務不履行又は不法行為を理由とする損害賠償(精神的・物質的損害)を請求する前提として、過去の賃借権の存否を確認する必要があると主張した。また、本件農地については昭和23年に買収・売渡処分がなされており、その効力は既に確定していた。
事件番号: 昭和24(オ)35 / 裁判年月日: 昭和28年12月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】確認の訴えは、現在の権利又は法律関係の存否を対象とすべきであり、過去の法律関係の確認を求める訴えは、原則として確認の利益を欠き不適法である。 第1 事案の概要:上告人(土地所有者)は、無断譲渡を理由に賃貸借契約を解除したとして、占有者である被上告人らに対し土地明渡請求等を提起した。しかし、訴訟継続…
あてはめ
上告人が主張する損害賠償請求は、過去の賃借権の存在を前提とするものである。しかし、上告人が真に解決すべきは現在の損害賠償請求権の有無という現在の法律関係である。過去の特定時点(昭和20年11月23日)における賃借権の存否は、その現在の法律関係を導くための前提事実にすぎない。したがって、現在の損害賠償請求権の存否を直接争うことが可能である以上、あえてその前提となる過去の法律関係について確認の訴えを提起することは、紛争の抜本的解決に資する有効適切な手段とはいえない。
結論
過去の法律関係の確認を求める本件訴えは、確認の利益を欠き不適法である。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、確認の訴えにおける「対象の適格」のうち、現在性に関する原則を示したものである。答案上は、過去の法律関係の確認請求に対し、『現在の法律関係そのものを争うべき』として、即時確定の利益の有無を否定する文脈で用いる。遺言無効確認の訴えなど、現在でも一定の例外(証書真否の訴え以外)は認められるが、基本的には本法理が維持されている。
事件番号: 昭和42(オ)954 / 裁判年月日: 昭和43年10月8日 / 結論: その他
土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは、土地賃借権を時効により取得することができる。
事件番号: 昭和24(オ)293 / 裁判年月日: 昭和26年12月25日 / 結論: 棄却
一 戦時罹災土地物件令第三条は、同条所定の期間、借地権者の土地に対する使用収益を制限すると共に、その地代又は借賃の支払義務を免れしめるに止まり、借地権自体の譲渡を制限禁止する趣旨ではない。 二 一旦相手方の賃借権を承認した者は、賃貸借の対抗要件の欠缺を主張して相手方の賃借権を否定することは許されない。