判旨
自作農創設特別措置法に基づく農地の買収には民法177条の適用がなく、未登記の贈与等による所有権移転も国に対抗できる。また、昭和22年改正前の農地調整法下では、農地賃貸借の合意解除に地方長官の許可は不要である。
問題の所在(論点)
1. 自作農創設特別措置法による農地買収に際し、未登記の所有権移転を国に対抗できるか(民法177条の適用の有無)。2. 昭和22年改正前の農地調整法下において、農地賃貸借の合意解除に地方長官の許可が必要か。
規範
1. 自作農創設特別措置法による農地の買収は、行政処分によって強制的に権利移動を生じさせるものであるから、対抗要件を定める民法177条の適用はない。2. 昭和22年法律第240号による改正前の農地調整法においては、農地賃貸借契約の合意解除・解約に関し、地方長官(現在の都道府県知事等)の許可を必要としない。
重要事実
上告人A1は、昭和18年2月に本件農地を上告人A2に贈与し引き渡したが、登記は未了であった。その後、国(被上告人)が自作農創設特別措置法に基づき本件農地を買収した。また、別の農地については、昭和21年12月末頃に上告人と小作人との間で農地賃貸借契約が合意解除されたが、当時の農地調整法9条3項に基づく地方長官の許可を得ていなかった。
あてはめ
1. 本件農地は買収前にA1からA2に贈与・引渡しがなされている。自創法による買収は民法177条の適用外であるため、未登記であってもA2は国に対して所有権を主張できる。2. 昭和21年当時の農地調整法には合意解除に関する許可制の規定がなかったため、許可がなくとも解除の効力は有効に発生しており、当該農地は「小作地」には該当しない。
結論
原判決を破棄し、広島高等裁判所に差し戻す。未登記の所有権移転も国に対抗可能であり、また当時の合意解除に許可は不要である。
事件番号: 昭和25(オ)280 / 裁判年月日: 昭和29年1月22日 / 結論: 棄却
農地の登記簿上の所有名義人の家督相続人が農地をその妹に贈与した場合において、右家督相続人を所有者として定めた買収計画及び同人を所有者とする買収令書による買収処分は法律上当然に無効ではない。
実務上の射程
行政処分による権利取得と民法177条の関係を示す重要判例。公法上の強制的な取得(買収や徴収)においては、登記を具備せずとも権利変動を対抗できるとする射程を有する。農地法制の変遷に関わる論点であるが、物権変動の対抗問題における例外法理として参照される。
事件番号: 昭和34(オ)114 / 裁判年月日: 昭和35年12月2日 / 結論: 棄却
一 自作農創設維持の事業により創設された自作地でその旨の登記を経由したものであつても、当然に遡及買収から除外されるものではない。 二 偽造の委任状に基づき作成された公正証書が債務名義の場合には請求異議の訴によりその執行力の排除を争うことができる。
事件番号: 昭和31(オ)845 / 裁判年月日: 昭和32年7月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分は真実の所有者に対して行うべきであるが、登記簿上の所有者に対し確定した買収処分は、それが登記名義人に対してなされたという一事をもって当然無効とはならない。また、自作農創設特別措置法28条にいう「自作をやめようとするとき」とは、必ずしもその旨の意思表示を要するものではない。 第1 事案…
事件番号: 昭和24(オ)155 / 裁判年月日: 昭和28年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】自作農創設特別措置法2条2項にいう「小作地」とは、正権原に基づく耕作者の地位を安定させる趣旨から、無権利者が耕作する土地はこれに含まれない。賃貸借が合意解除され消滅した後に、当初から賃貸人の承諾なく耕作していた転借人が占有する土地は、同法の小作地に該当しない。 第1 事案の概要:被上告人(賃貸人)…
事件番号: 昭和40(行ツ)63 / 裁判年月日: 昭和42年4月13日 / 結論: 棄却
一 町村制のもとにおいて村が知事の許可なしに行なつた基本財産の処分行為であつても、町村制の廃止後は、地方自治法附則第一一条により、完全にその効力を生ずるにいつたと解すべきである。 二 自作農創設特別措置法第四〇条ノ二に基づく牧野の買収処分により国が所有権を取得した場合において、その所有権の取得およびその後の所有権の取得…