一 町村制のもとにおいて村が知事の許可なしに行なつた基本財産の処分行為であつても、町村制の廃止後は、地方自治法附則第一一条により、完全にその効力を生ずるにいつたと解すべきである。 二 自作農創設特別措置法第四〇条ノ二に基づく牧野の買収処分により国が所有権を取得した場合において、その所有権の取得およびその後の所有権の取得については、民法第一七七条の適用があると解すべきである。
一 町村制のもとにおいて村が知事の許可なしに行なつた基本財産処分行為の同法廃止後における効力 二 自作農創設特別措置法第四〇条ノ二に基づく牧野の買収処分により国がその所有権を取得した場合と民法第一七七条適用の有無
町村制147条,地方自治法附則11条,自作農創設特別措置法40条ノ2 4項4号,自作農創設特別措置法41条1項1号,民法177条
判旨
自作農創設特別措置法に基づく牧野の買収処分により国が取得した所有権等については民法177条が適用されるが、当該買収処分が当然無効である場合、その後の売渡を受けた者は「正当な利益を有する第三者」に該当しない。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法に基づく国の所有権取得に民法177条が適用されるか。また、買収処分が当然無効である場合に、その後の売渡を受けた者が同条にいう「第三者」に該当するか。
規範
自作農創設特別措置法40条の2に基づく牧野の買収処分により国が所有権を取得した場合、その所有権の取得およびその後の承継については民法177条の適用を受ける。もっとも、登記の欠缺を主張し得る「第三者」とは、不動産に関する物権の得喪変更につき、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する者に限られる。
重要事実
町村制下において村が知事の許可なく行った基本財産の処分行為について、後に地方自治法附則11条により効力が生じたとされる土地が対象となった。国は自作農創設特別措置法に基づき本件土地の買収処分および売渡処分を行ったが、原審によれば当該買収処分自体が「当然無効」と判断される事案であった。上告人らはこの無効な買収処分に基づく売渡を受けた者として、所有権の取得を主張した。
事件番号: 昭和27(オ)1132 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地の買収処分において、登記簿上の名義人を所有者としてなされた処分は、異議申立や出訴期間内に行われた争訟によって是正されない限り、直ちに当然無効とはならない。 第1 事案の概要:政府が自作農創設特別措置法に基づき農地の買収処分を行った際、真実の所有者ではなく登記簿上の名義人を相手方として買収計画お…
あてはめ
まず、国による牧野の買収処分に伴う所有権取得は、民法177条の適用対象となる。しかし、本件において前提となる国への買収処分は当然無効である。当然無効な処分に基づいて売渡を受けた上告人らは、有効な権利取得を前提とした対抗関係に立つものではない。したがって、上告人らは登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する「第三者」には該当せず、登記の有無を問わず所有権を対抗される立場にある。
結論
本件土地の買収処分が当然無効である以上、上告人らは民法177条の第三者に該当せず、対抗問題を生じる余地はない。したがって、上告人らの主張は認められない。
実務上の射程
農地買収処分という公法上の行為であっても、私法上の対抗問題(民法177条)が適用されることを明示した重要判例である。同時に、前立権限が「当然無効」である場合には、その承継人は登記の欠缺を主張する正当な利益を欠き、対抗関係の枠組みから除外されるという実務上の処理指針を示している。
事件番号: 昭和28(オ)1266 / 裁判年月日: 昭和33年4月30日 / 結論: 棄却
農地所有権の移転後、移転登記未経由の間に登記簿上の所有名義人を所有者としてなされた農地買収処分は、当然無効と解すべきではない
事件番号: 昭和31(オ)478 / 裁判年月日: 昭和32年11月28日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】農地開放の申請に基づく農地買収処分において、真実の申請者ではない登記簿上の名義人を対象としてなされた買収計画及びそれに基づく買収令書の発行は、原則として法律上当然に無効である。 第1 事案の概要:上告人(子)は、先代D(父)の隠居に伴う家督相続により本件土地の所有権を取得したが、相続登記は未了であ…
事件番号: 昭和41(行ツ)41 / 裁判年月日: 昭和43年5月28日 / 結論: 破棄差戻
耕地整理の施行により大略一反歩ずつに整然と区画されて後、都市計画法による都市計画区域に編入された土地を対象とする農地買収処分の無効確認訴訟において、旧所有者である原告から、右土地が大都市近郊の住宅地として開発され、戦前すでに風致地区に指定された旨の主張があり、また判示のように、右土地の耕作が必ずしも正当な権原に基づくも…
事件番号: 昭和31(オ)313 / 裁判年月日: 昭和33年1月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】農地買収計画において、登記簿上の所有者を相手方としてなされた処分は、真の所有者がその相続人である場合でも、当然に無効となるものではない。また、買収令書の交付欠如や異議決定の未了、現況の判断の困難性などの事由も、買収計画を当然無効とする理由にはならない。 第1 事案の概要:福島県知事による農地買収計…