耕地整理の施行により大略一反歩ずつに整然と区画されて後、都市計画法による都市計画区域に編入された土地を対象とする農地買収処分の無効確認訴訟において、旧所有者である原告から、右土地が大都市近郊の住宅地として開発され、戦前すでに風致地区に指定された旨の主張があり、また判示のように、右土地の耕作が必ずしも正当な権原に基づくものといえないものであるにもかかわらず、これらの事情を度外視すべき特段の理由を説示することなく、これが現に耕作されていることから、ただちに右土地を買収の対象となるべき農地にあたると判断したのは、審理不尽・理由不備の違法がある。
耕地整理ののち都市計画法による都市計画区域に編入された土地を農地と認定した判断に審理不尽理由不備の違法があるとされた事例
自作農創設特別措置法(昭和21年法律第43号)2条1項,民訴法395条1項6号
判旨
買収対象となる「農地」の該否は、買収当時の土地の現況のみならず、利用目的、耕作の態様、その他諸般の事情を勘案して客観的に決定すべきである。また、小作地としての認定には、所有権以外の正当な耕作権原の有無を慎重に審理する必要がある。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法2条1項にいう買収対象の「農地」の判断基準、および同条2項の「小作地」該当性を判断するための耕作権原の審理の要否が問題となった。
規範
自作農創設特別措置法2条1項にいう「農地」(耕作の目的に供される土地)に該当するか否かは、単に買収当時における土地の現況のみに着目するのではなく、土地の利用目的、耕作の態様、その他諸般の事情を総合的に勘案して客観的に決定すべきである。また、同条2項の「小作地」該当性を判断するにあたっては、耕作者が所有権以外の正当な権原(賃貸借、使用貸借等)に基づき耕作しているか、あるいは黙認が承諾とみなされるべき特段の事情があるかを個別具体的に検討しなければならない。
重要事実
事件番号: 昭和39(行ツ)21 / 裁判年月日: 昭和39年10月13日 / 結論: 棄却
自作農創設特別措置法第五条第四号により買収除外の指定を受けた区域内にある小作地であつても、これを同法第三条第一項第二号にいう在村地主の保有小作面積に算入することは許される。
上告人は住宅用地とする目的で本件土地を購入したが、本件土地を含む一帯は都市計画区域や風致地区に指定され、住宅地として開発が進んでいた。買収当時、本件土地の一部では第三者が野菜等を耕作していたが、その耕作は、上告人の母による勝手な承諾、上告人による黙認、または管理人の暗黙の了解に基づくものであった。原審は、現況が畑であることのみをもって「農地」とし、かつ詳細な権原の有無を審理せずに「小作地」に当たると判断した。
あてはめ
本件土地は住宅地として開発された経緯があり、所有者も住宅用地としての利用目的を有していた。現況において一部で耕作が行われていたとしても、それが戦時中の食糧増産等の特殊な事情に基づく一時的なものであれば、直ちに「農地」とは断定できない。また、耕作権についても、上告人の母や管理人に正当な代理権があったか、あるいは黙認が法的な承諾と同視できるかという点について、耕作者の特定を含めた詳細な審理が尽くされておらず、正当な権原に基づく耕作であるとの認定は不十分といえる。
結論
本件土地を直ちに買収対象の農地・小作地と認めた原判決には、解釈適用の誤り、審理不尽、理由不備の違法がある。したがって、原判決を破棄し、さらなる審理のため差し戻すべきである。
実務上の射程
行政法における「農地」の定義(現況主義の修正)や、公法上の処分における基礎事実の認定(審理不尽)を争う際の論拠となる。特に、現況が農地であっても、客観的な利用目的や地域的背景からその性質を否定し得る余地を認めた点で重要である。答案上は、法規の要件解釈において諸般の事情を考慮する総合考慮の枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)1065 / 裁判年月日: 昭和40年8月2日 / 結論: 棄却
一 地主所有の果樹が生立する果樹園であつても、自作農創設特別措置法による農地買収の対象となる。 二 自作農創設特別措置法第三条第五項第二号によるいわゆる仮装自作地の買収については、同条第一項第二号、第三号所定の買収面積の制限を受けない。
事件番号: 昭和28(オ)1266 / 裁判年月日: 昭和33年4月30日 / 結論: 棄却
農地所有権の移転後、移転登記未経由の間に登記簿上の所有名義人を所有者としてなされた農地買収処分は、当然無効と解すべきではない
事件番号: 昭和31(オ)372 / 裁判年月日: 昭和33年7月8日 / 結論: 棄却
一 日本国有鉄道は、日本国有鉄道法第六三条により、自作農創設特別措置法第五条第一号の適用につき国とみなされる。 二 日本国有鉄道がその職員の食糧確保のための厚生施設として利用している農地は、日本国有鉄道法第六三条により自作農創設特別措置法第五条第一号の適用につき国とみなされる日本国有鉄道が「公用に供している農地」にあた…
事件番号: 昭和40(行ツ)111 / 裁判年月日: 昭和42年3月31日 / 結論: 破棄差戻
農地の買収処分無効確認の訴と所有権移転登記抹消登記手続請求の訴との併合訴訟において、前者の訴につき、第一審が取得時効の完成を認めて訴を不適法として却下したのに対し、原審が時効の完成を否定し第一審判決を取り消して、請求を認容したのは、民訴法第三八八条の必要的差戻しの規定に違背するものというべきであるが、後者の訴についての…