判旨
選挙における違反行為が認められる場合であっても、それが著しく選挙の公正を害し、または選挙の結果に異動を及ぼすおそれがある場合でない限り、当選または選挙は無効とはならない。
問題の所在(論点)
選挙に関する法規定への違反行為(被選挙権の有無や選挙実務上の違反)が存在する場合に、どの程度の態様であれば選挙または当選を無効とすべきか。公職選挙法等における「選挙無効」の判断基準が問題となる。
規範
選挙違反(書記の資格等に関する違反など)があった場合においても、その事態によって直ちに選挙が無効となるわけではない。当選または選挙を無効ならしめるためには、当該違反行為によって「著しく選挙の公正を害し、または選挙の結果に異動を及ぼすおそれ(結果異動の蓋然性)」が認められることを要する。
重要事実
上告人は、当選人である原正則が「書記」の地位にあったとして、その被選挙権の欠如や選挙の無効を主張した。しかし、原審は原正則が書記であったという事実を認めず、また仮に何らかの違反があったとしても、本件における具体的な事態は選挙の公正を著しく害したり、選挙結果に異動を及ぼすほどのものではないと判断した。上告人はこれを不服として上告した。
あてはめ
最高裁は、原審が認定した事実に基づき、原正則が書記であったとの事実は認められないとした。その上で、仮に所論のような違反があったとしても、本件の諸事情に照らせば「著しく選挙の公正を害し、または選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」があるとまでは認められないとした原審の判断を妥当とした。具体的にどの程度の票差や態様であったかは判決文からは不明であるが、事実認定の範囲内で選挙結果を左右する蓋然性を否定した。
結論
当選または選挙を無効とすべき事態には当たらない。したがって、上告を棄却する。
事件番号: 昭和23(オ)36 / 裁判年月日: 昭和23年9月14日 / 結論: 棄却
しかし原審の認定した處によれば選舉管理委員會の書記は委員長が任命することになつて居るものであるのに原正則が投票用紙交付の事務を行つたのは當日投票用紙交付事務の繁忙と手薄とを見兼ね選舉事務員Dの依頼により自發的に僅々二十分間ばかり手傅つたに過ぎないというのであるからこれを以て書記といえないこと勿論である。
実務上の射程
本判決は、公職選挙法(旧法下の判断を含む)における選挙無効訴訟の一般原則を確認したものである。答案上は、選挙手続の瑕疵や自由妨害があった場合に、形式的な違反のみで無効とするのではなく、「選挙の結果に異動を及ぼすおそれ」という実質的要件を検討する際の判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)734 / 裁判年月日: 昭和31年10月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の自書式投票において、候補者の氏名の一部に誤記がある場合であっても、全候補者の氏名との照合により特定の候補者に対する投票の意思が客観的に認められるときは、当該投票は有効である。 第1 事案の概要:本件選挙において、ある投票用紙に記載された氏名の「氏」は「D」であり、「名」の二字のうち一…
事件番号: 昭和23(オ)34 / 裁判年月日: 昭和26年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】訴状に委員長の名前が併記されていても、訴状全般の内容から選挙管理委員会を被告とする意図が明白であり、当事者双方がそれに応じて訴訟を遂行した場合は、委員会を被告と解して差し支えない。また、投票の有効性は、文字の不鮮明さや他候補者の存在を総合考慮し、通常人が判読し得ないものは無効と判断される。 第1 …
事件番号: 昭和23(オ)47 / 裁判年月日: 昭和23年12月24日 / 結論: 棄却
投票紙自体の記載体樣其他選舉當時の諸般の事情等から見て本件係争の二票は選舉人が不慣れの爲め、初め記載の場所を間違えて候補者の氏名を記載したが、後でそれに氣付いてこれを訂正する目的で、正規の場所即候補者氏名記載欄に再び記載したもので、他意あるものではないと認定したものであることは、原判文上明である、而して右の樣な資料によ…
事件番号: 昭和27(オ)353 / 裁判年月日: 昭和27年8月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】選挙において氏名の一部が異なる「A正」と記載された投票は、候補者「A忠一」に対する有効な投票とは認められない。 第1 事案の概要:選挙において、候補者「A忠一」が存在した。これに対し、投票用紙に「A正」と記載された投票がなされた。上告人は、当該投票が「A忠一」への有効な投票としてカウントされるべき…