判旨
裁判所法7条2号にいう「訴訟法において特に定める抗告」とは、憲法判断を含む場合など、法律により特に最高裁判所の権限に属するものと定められた抗告に限定される。したがって、憲法適合性の判断を問題としない高等裁判所の決定等に対する一般的な抗告は、最高裁判所の裁判権に含まれない。
問題の所在(論点)
裁判所法7条2号に規定される、最高裁判所が裁判権を有する「訴訟法において特に定める抗告」の意義、および高等裁判所の決定に対する一般的な抗告が最高裁判所の裁判権に含まれるか。
規範
裁判所法7条2号の「訴訟法において特に定める抗告」とは、訴訟法上、特に最高裁判所の権限に属するものと明記された抗告を指す。同法16条2号や24条3号が下級裁判所の抗告裁判権を一般的に規定しているのと対照的に、同法7条は最高裁判所の負担軽減と使命の重要性に鑑み、上訴を制限する趣旨である。具体的には、憲法適否の問題についてのみ特に最高裁判所に抗告を認める等の特別の規定がある場合に限られる。
重要事実
抗告人は、高等裁判所が下した決定に対して最高裁判所に抗告を申し立てた。しかし、当該抗告の理由は、原決定における法律・命令・規則または処分の憲法適合性に関する判断を争うものではなかった。当時、民事・刑事訴訟法の応急的措置に関する法律等により、憲法問題に限って最高裁判所への抗告が認められていたが、本件はこれに該当するか否かが争われた。
あてはめ
裁判所法は各級裁判所の権限を定めているが、最高裁判所の裁判権を定める7条2号は、原審裁判所を掲げず「特に定める」という特殊な表現を用いている。これは、最高裁判所の負担を軽減し、重要性の低い抗告を排除する趣旨と解される。本件抗告理由は、原決定の憲法適合性を問題とするものではなく、当時の応急的措置法等が認めた「特に最高裁判所に抗告を許している規定」のいずれにも該当しない。したがって、本件は最高裁判所が裁判権を有する抗告には当たらない。
結論
本件抗告は不適法であり、却下を免れない。
事件番号: 昭和22(ク)8 / 裁判年月日: 昭和23年1月17日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】下級裁判所の決定または命令に対して最高裁判所へ抗告ができるのは、憲法違反を理由とする場合等、訴訟法が特に定めた場合に限られる。 第1 事案の概要:抗告人は、仮処分執行取消申立事件における申立却下決定に対し、札幌高等裁判所へ即時抗告をしたが、同裁判所から抗告棄却の決定を受けた。抗告人はこれを不服とし…
実務上の射程
最高裁判所に対する抗告の門戸が極めて限定的であることを示す。現在は民事訴訟法330条(特別抗告)や刑事訴訟法433条などがこれに該当し、憲法違反や判例違反という限定された事由がある場合にのみ最高裁判所への抗告が認められるという、現行法の解釈・運用の基礎となる判例である。
事件番号: 昭和23(ク)25 / 裁判年月日: 昭和23年9月22日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所への抗告は、訴訟法が特に最高裁の権限と定める場合や、憲法上の判断の不当を理由とする場合に限られ、それ以外は不適法として却下される。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定に対して最高裁判所への抗告を申し立てた。しかし、当該抗告申立書の内容を精査したところ、原決定においてなされた憲法上の判断の…
事件番号: 昭和24(ク)67 / 裁判年月日: 昭和24年10月31日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法が特に最高裁判所の権限に属するものと定めた場合に限り許容される。具体的には、旧民事訴訟法419条の2(現行336条)の特別抗告のように、憲法違反を理由とする場合に限定される。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てたが、その抗告申立書の内容から、…
事件番号: 昭和24(ク)75 / 裁判年月日: 昭和26年2月6日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、民事訴訟法上の特別抗告(憲法違反等を理由とするもの)に限られ、それ以外の理由による抗告は不適法として却下される。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。抗告人が主張した抗告理由は、原決定において法律・命令・規則又は処分が憲法に適合するか否かにつ…
事件番号: 昭和29(ク)53 / 裁判年月日: 昭和29年5月21日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に許された場合に限られ、民事事件においては、原決定の憲法判断の不当を理由とする特別抗告のみが認められる。 第1 事案の概要:抗告人は、仮処分により保全すべき権利について疎明がないとした原決定を不服として、最高裁判所に対し抗告を申し立てた。その際…