判旨
訴訟が裁判をするに熟したか否かを判断して口頭弁論を終結させることは裁判所の裁量に属し、証拠の取捨選択も事実審の専権事項であるため、特段の不当性が認められない限り違法とはならない。
問題の所在(論点)
当事者が弁護士の急死等の不測の事態により弁論の機会を十分に得られなかった場合において、裁判所が口頭弁論を終結し、判決を言い渡すことは、民事訴訟法上の裁量権の逸脱・濫用(違法な手続)にあたるか。
規範
訴訟が裁判をするに熟したか否かを判断して口頭弁論を終結することは、裁判所の自由裁量に属する事項である。また、証拠の取捨判断(事実認定)は、事実審である裁判所の自由心証および専権に属する。
重要事実
控訴審において、控訴人の担当弁護士が口頭弁論期日の直前に急逝した。弁護士の遺族から裁判所に対し、弁護士の死亡に伴う連絡不充分および新任弁護士選定の必要性を理由とした期日延期の申請がなされたが、裁判所は延期を認めず口頭弁論を終結し、控訴人に敗訴の判決を下した。上告人は、証拠収集や弁論の機会を奪われた不当な事実認定であるとして上告した。
あてはめ
本件において、上告人は弁護士の急逝という事故により資料提出や弁論の機会を失ったと主張する。しかし、記録を調査しても、裁判所が当該事件を「裁判をするに熟した」と判断して口頭弁論を終結させた点に不当な箇所は認められない。また、前審が一方の証拠を排斥し、他方の証拠を基礎として事実を確定したことは裁判所の自由心証に属する適法な権限行使である。したがって、手続上の違法は存在しない。
結論
口頭弁論の終結時期の決定および証拠の取捨選択は裁判所の裁量権の範囲内であり、本件判決に違法はないため、上告を棄却する。
実務上の射程
裁判所の訴訟指揮権(口頭弁論の終結)および自由心証主義の広汎な裁量を認めた判例である。答案上は、手続的保障と訴訟経済の調整局面において、裁判所の裁量権の行使に著しい不合理(裁量権の逸脱・濫用)があるか否かを検討する際の基礎的な規範として活用できる。
事件番号: 昭和27(オ)1123 / 裁判年月日: 昭和28年5月29日 / 結論: 棄却
口頭弁論期日変更申立書に、当該期日の十数日前脳溢血症を発し、三ケ月間絶対安静を必要とする旨の診断書が添付されているに止まり、その他の事情(たとえば、訴訟代理人を選任することができないか等)を明らかにする何等の資料もないときは、民訴第一五二条第四項にいわゆる「己ムコトヲ得サル事由」があるものとは認められない。