口頭弁論期日変更申立書に、当該期日の十数日前脳溢血症を発し、三ケ月間絶対安静を必要とする旨の診断書が添付されているに止まり、その他の事情(たとえば、訴訟代理人を選任することができないか等)を明らかにする何等の資料もないときは、民訴第一五二条第四項にいわゆる「己ムコトヲ得サル事由」があるものとは認められない。
民訴第一五二条第四項にいわゆる「己ムコトヲ得サル事由」があると認められない一事例
民訴法152条4項
判旨
口頭弁論期日の変更には「顕著な事由」を要し、特に争点整理後の期日変更には「やむを得ない事由」が必要とされる。当事者の病気であっても、訴訟代理人の選任等により期日に対応可能な事情がある場合は、変更を認めないことに違法はない。
問題の所在(論点)
争点整理手続を終了した後の期日において、当事者の病気を理由とする期日変更申立てが「やむを得ない事由」に該当し、これを却下して弁論を終結することが適法か。
規範
口頭弁論の期日は、当事者の申立てにより、又は職権で変更することができるが、顕著な事由がある場合に限られる(民訴法93条3項)。特に争点及び証拠の整理を終えた後の期日については、訴訟の迅速な進行を確保する観点から「やむを得ない事由」がある場合でなければ変更が許されない(民訴法161条3項・152条4項参照)。
重要事実
本件は第一審で準備手続を経た上、控訴審の第一回口頭弁論期日にて争点及び証拠の整理を完了した。次回の口頭弁論期日を昭和27年9月26日と指定されたところ、上告人は同月9日に脳溢血を発症し、3ヶ月間の絶対安静を要する旨の診断書を添付して期日変更を申し立てた。しかし、上告人側は病状以外の事情(訴訟代理人を選任できない等)を明らかにする資料を提出しなかった。原審は変更を認めず、上告人不出頭のまま弁論を終結した。
あてはめ
本件では、期日指定の十数日前に脳溢血を発症した事実は認められるものの、当事者本人が出頭できないことのみをもって直ちに「やむを得ない事由」があるとはいえない。本人が病気であっても、弁護士を訴訟代理人に選任して訴訟を継続することは可能であり、代理人選任が不可能である等の特段の事情について資料が提出されていない以上、期日を変更すべき客観的な必要性は証明されていないと解される。したがって、変更を認めず弁論を終結した原審の措置に裁量権の逸脱はない。
結論
期日変更の申立てを容れず、上告人不出頭のまま弁論を終結して判決をした原審の措置は違法ではない。また、申請済みの証人の取調べを行わなかったことも、唯一の証拠と認めるに足りない以上、適法である。
実務上の射程
争点整理後の期日変更には厳格な要件が課されることを示す。実務上、当事者本人の病気は一見すると顕著な事由に見えるが、代理人による対応可能性を考慮すべきであり、答案作成上は迅速な裁判の要請と当事者の手続保障(不出頭による不利益)の均衡を論じる際の基準となる。
事件番号: 昭和37(オ)528 / 裁判年月日: 昭和38年4月16日 / 結論: 棄却
一 弁論の再開を命ずると否とは裁判所の専権事項であつて、裁判所が当事者の弁論再開の申請を採用しなかつたため、新な証拠の提出ができなかつたとしても、それは証拠申出を不当に制限したものとはならない。 二 当事者の一方が適法な呼出を受けながら口頭弁論期日に出頭しない場合に、裁判所が口頭弁論を終結し、裁判長において判決言渡期日…