不適法なことが明らかであって当事者の訴訟活動により適法とすることが全く期待できない訴えにつき、口頭弁論を経ずに、訴えを却下するか、又は却下判決に対する控訴を棄却する場合には、訴状において被告とされている者に対し訴状、控訴状又は判決正本を送達することを要しない。
不適法なことが明らかであって当事者の訴訟活動により適法とすることが全く期待できない訴えにつき口頭弁論を経ずに訴えを却下するか又は却下判決に対する控訴を棄却する場合における被告に対する訴状、控訴状又は判決正本の送達の要否
民訴法193条,民訴法202条,民訴法229条,民訴法371条,民訴法384条
判旨
訴えが不適法で補正の余地が全くないことが明らかな場合には、被告に訴状等を送達せず、口頭弁論を経ずに訴えを却下する判決をすることが許される。このような極めて例外的な場合には、相手方への送達や口頭弁論は訴訟の進行に資さず、不要であると解される。
問題の所在(論点)
訴えが不適法で補正の余地がない場合に、被告に対する訴状等の送達および口頭弁論を経ることなく訴えを却下する判決をすることは、適正な手続を定めた民事訴訟法および憲法に違反しないか。
規範
裁判制度の趣旨に照らし、もはや当該訴えが不適法であることが明らかであって、当事者のその後の訴訟活動によって適法となることが全く期待できない場合には、被告(相手方)に訴状や控訴状を送達せず、口頭弁論を経ずに訴え却下(または控訴棄却)の判決をし、その判決正本を被告に送達しなくても差し支えない。これは、そのような手続が訴訟の進行及び判断にとって何ら資するところがないからである。
重要事実
上告人は、年金支給裁定の変更を求めた前訴において、最高裁判所まで争い棄却判決が確定していた。しかし、上告人は国を被告として、さらに当該確定判決の無効確認および裁定の変更を求める本訴を提起した。第一審および第二審(原審)は、いずれも訴状や控訴状、判決正本を被告(国)に送達することなく、口頭弁論も経ずに訴えを却下(控訴棄却)したため、上告人が憲法および民事訴訟法の規定に違反するとして上告した。
事件番号: 昭和62(オ)457 / 裁判年月日: 昭和62年10月1日 / 結論: 棄却
訴え却下の第一審判決を是認して口頭弁論を経ないで控訴棄却の判決を言い渡す場合には、当事者に対し判決言渡期日の告知及び呼出手続をすることを要しない。
あてはめ
本件訴えは、最高裁まで争われ確定した判決の無効確認を求めるものであるが、かかる訴えは民事訴訟法上予定されていない。したがって、本件訴えは不適法であり、かつ当事者の釈明等によっても適法となる可能性(補正の余地)が全くないといえる。このような場合、相手方に訴状等を送達して手続に関与させることは、無益な手続を強いるものであり、訴訟の進行に資さない。ゆえに、送達や弁論を省略した一・二審の措置は正当と評価される。
結論
確定判決の無効確認という法的に不可能な訴えについて、送達や口頭弁論を経ずに却下した原審の措置に違法はない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
民訴法140条(口頭弁論を経ない訴え却下)および138条(訴状送達)の例外を認めた判例である。答案上は、濫用的・無益な訴訟における例外的手続の許容性を論じる際に活用する。ただし、あくまで「適法となることが全く期待できない」という極めて限定的な場合にのみ適用される射程であることに注意が必要である。
事件番号: 昭和36(オ)958 / 裁判年月日: 昭和37年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が当事者の主張と異なる事実認定に基づき請求を棄却しても、裁判を受ける権利を侵害したことにはならず、また原審で主張されなかった事由について判断を示さなかったとしても判断遺脱の違法は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、不動産登記申請における登記権利者の表示の相違が不動産登記法49条2号(…
事件番号: 昭和28(テ)7 / 裁判年月日: 昭和30年2月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】再上告の理由として主張された憲法違反が、その実質において単なる法令違反をいうものである場合には、適法な再上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:上告人(再上告人)が、原判決(第2審判決)に対して憲法違反を主張して再上告を提起した事案である。 第2 問題の所在(論点):上告人が主張する「憲法違反」…