出入国管理及び難民認定法別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格をもって本邦における在留を継続していた外国人につき、法務大臣が、右外国人と日本人である配偶者とが長期間にわたり別居していたことなどから、右外国人の本邦における活動は、日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当しないと判断し、右外国人の意に反して、その在留資格を同法別表第一の三所定の「短期滞在」に変更する旨の申請ありとして取り扱い、これを許可する処分を行ったが、その後に、日本人である配偶者が提起した婚姻無効確認請求訴訟において、右婚姻関係が有効であることが判決によって確定した上、その活動は、日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当するとみることができないものではないなど判示の事情の下では、右外国人がした「短期滞在」の在留資格による在留期間の更新申請に対し、これを不許可とした処分は、右外国人の在留資格が変更された経緯を考慮していない点で、法務大臣がその裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものであって、違法である。
出入国管理及び難民認定法別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格をもって本邦に在留していた外国人の在留資格につき同法別表第一の三所定の「短期滞在」への変更許可がされた後における在留期間の更新不許可が右変更許可の経緯を考慮していない点で違法とされた事例
出入国管理及び難民認定法2条の2,出入国管理及び難民認定法20条,出入国管理及び難民認定法21条,出入国管理及び難民認定法別表第1の3,出入国管理及び難民認定法別表第2,行政事件訴訟法30条
判旨
在留資格の変更が行政側の判断で事実上強制され、本来の在留資格に基づく更新機会が失われた特段の事情がある場合、その後の更新申請を不許可とすることは信義則に反し裁量権の逸脱・濫用となる。
問題の所在(論点)
在留期間更新許可(入管法21条)の判断において、行政側が申請者の意に反して在留資格を変更させた経緯がある場合、その経緯を考慮せずになされた不許可処分は裁量権の逸脱・濫用となるか。
規範
在留期間更新許可申請に対する判断は法務大臣の広範な裁量に委ねられるが、申請に至る経緯や在留資格変更の過程に信義則上の問題がある場合には、その事情を考慮せずに不許可処分を行うことは、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものとして違法となる。
事件番号: 昭和50(行ツ)120 / 裁判年月日: 昭和53年10月4日 / 結論: 棄却
一 外国人は、憲法上、わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されていない。 二 出入国管理令二一条三項に基づく在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断は「法務大臣の裁量に任されているものであり、上陸拒否事由又は退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新を不許可にすること…
重要事実
中国人である被上告人は「日本人の配偶者等」の在留資格で在留していたが、日本人配偶者との別居を理由に、当局の判断で意に反して「短期滞在」へと在留資格を変更させられた。その後、配偶者からの婚姻無効訴訟において婚姻の有効性が確定し、被上告人は「短期滞在」の更新を申請したが、法務大臣(上告人)はこれを不許可とした。当時、被上告人は離婚訴訟に応訴するなど、実質的に配偶者としての活動を継続する意思を有していた。
あてはめ
当局は別居事実のみから配偶者としての活動実態がないと判断し、被上告人の意に反して「短期滞在」への変更申請があったものとして処理し、本来の在留資格での更新機会を失わせた。しかし、処分時には婚姻の有効性が判決で確定しており、「日本人の配偶者等」の活動に該当する余地があった。このような経緯がある以上、信義則上、一旦「短期滞在」の更新を許可した上で、本来の「日本人の配偶者等」への変更申請の適否を公権的に判断する機会を与えるべきであった。これらを考慮しない不許可処分は、考慮尽くしあるいは他事考慮として裁量の逸脱・濫用にあたる。
結論
本件不許可処分は、在留資格変更に至る経緯を考慮していない点において、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであり、違法である。
実務上の射程
入管処分における広範な裁量を認めつつも、行政側の過去の関与や信義則によってその裁量が収縮・制約される場面を示した事例である。答案上は、行政庁の先行行為により私人の手続的地位が不当に害された場合の救済法理として、裁量審査の文脈で活用できる。
事件番号: 平成6(行ツ)153 / 裁判年月日: 平成10年4月10日 / 結論: 棄却
法務大臣が、日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法一条の規定に基づく許可を受けて本邦で永住することができる地位を有していた者に対し、外国人登録法(昭和六二年法律第一〇二号による改正前のもの)一四条一項に基づく指紋の押なつを拒否していることを理由とし…
事件番号: 平成11(行ヒ)46 / 裁判年月日: 平成14年10月17日 / 結論: 破棄自判
1 日本人との婚姻関係が社会生活上の実質的基礎を失っている外国人は,その活動が日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当するということができず,出入国管理及び難民認定法別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格取得の要件を備えているとはいえない。 2 日本人と婚姻関係にある外国人が,本邦上陸後約1年3か月間の同…
事件番号: 平成4(行ツ)140 / 裁判年月日: 平成8年2月22日 / 結論: 棄却
一 出入国管理及び難民認定法(平成元年法律第七九号による改正前のもの)四条一項一六号、同法施行規則(平成二年法務省令第一五号による改正前のもの)二条三号に基づく在留資格をもって本邦に在留する外国人の在留期間の更新申請に対し在留期間を一年と指定して許可する処分の取消しを求める訴えは、その利益を欠く。 二 外国人登録法(昭…
事件番号: 昭和53(行ツ)127 / 裁判年月日: 昭和55年3月7日 / 結論: 棄却
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係諸命令の措置に関する法律二条六項は出入国管理令二四条の適用を排除するものではない。