1 日本人との婚姻関係が社会生活上の実質的基礎を失っている外国人は,その活動が日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当するということができず,出入国管理及び難民認定法別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格取得の要件を備えているとはいえない。 2 日本人と婚姻関係にある外国人が,本邦上陸後約1年3か月間の同居生活の後,約4年8か月間別居生活を続け,その間,婚姻関係修復に向けた実質的,実効的な交渉等はなく,独立して生計を営んでいたなど判示の事情の下においては,当該外国人の本邦における活動は日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当するということができず,当該外国人は出入国管理及び難民認定法別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格取得の要件を備えていない。
1 日本人との婚姻関係が社会生活上の実質的基礎を失っている外国人と出入国管理及び難民認定法別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格 2 日本人と婚姻関係にある外国人につき出入国管理及び難民認定法別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格取得の要件を備えていないとされた事例
出入国管理及び難民認定法2条の2,出入国管理及び難民認定法別表第二
判旨
「日本人の配偶者等」の在留資格は、単に法律上の婚姻関係があるだけでは足りず、日本人の配偶者としての活動を現に行うことを要する。婚姻が社会生活上の実質的基礎を失い、共同生活の回復の見込みがない場合は、在留資格該当性は認められない。
問題の所在(論点)
入管法20条3項に基づく在留資格変更許可の要件である「在留資格該当性」に関し、法律上の婚姻関係が存続していても、別居等により実体がない場合に「日本人の配偶者の身分を有する者としての活動」に該当するか。また、その判断において日本人側の有責性は影響するか。
規範
「日本人の配偶者等」の在留資格(入管法別表第2)をもって在留するためには、単に法律上の婚姻関係にあるだけでは足りず、日本人の配偶者の身分を有する者としての活動を行うことを要する。当該活動とは、真摯な意思をもって共同生活を営むという婚姻の本質に基づく活動を指す。したがって、夫婦の一方又は双方が婚姻継続の意思を確定的に喪失し、共同生活の実体を欠いて回復の見込みがない(社会生活上の実質的基礎を失った)場合には、在留資格該当性を欠く。この判断は客観的に行われるべきであり、一方が有責配偶者であるか否かは判断を左右しない。
事件番号: 平成17(行ヒ)47 / 裁判年月日: 平成20年2月28日 / 結論: 破棄自判
生活保護を受けている者が,保護を受け始めて間もない時期に,外国への渡航費用として約7万円という金額の支出をすることができたなど判示の事実関係の下においては,同人が,そのころ少なくとも上記渡航費用を支出することができるだけの額の,本来その最低限度の生活の維持のために活用すべき金銭を保有していたことが明らかであり,上記渡航…
重要事実
タイ国籍の被上告人は、日本人乙と婚姻し「日本人の配偶者等」の在留資格で在留していたが、乙が別の女性と出奔し、約4年8ヶ月にわたり別居が継続した。被上告人は離婚を拒んでいたが、在留期間更新のために乙に対し「ビザが取れたら離婚する」旨の提案をして協力を得ていた。乙は婚姻修復の意思がないことを明言し、他方で被上告人はホステスとして稼働し自活していた。この状況下で、被上告人が「短期滞在」から「日本人の配偶者等」への在留資格変更申請を行ったところ、不許可処分(本件処分)を受けた。
あてはめ
本件では、約4年8ヶ月もの長期別居が続いており、その間、婚姻関係修復に向けた実効的な交渉はない。被上告人は離婚届の写しを交付するなど外形的には離婚を容認する態度を示し、乙も修復の意思を完全に否定している。乙が他の女性との間に子をもうけ同居していることも考慮すれば、夫婦としての共同生活の実体はなく、回復の見込みも全くない。したがって、本件婚姻は社会生活上の実質的基礎を失っている。被上告人が乙を有責配偶者であると主張しても、客観的な破綻の事実は動かず、配偶者としての活動を行っているとは評価できない。
結論
被上告人の本邦における活動は「日本人の配偶者」としての活動に該当せず、在留資格該当性を欠くため、本件処分は適法である。
実務上の射程
在留資格該当性の判断において「実体」を重視する枠組みを示した重要判例である。行政法(処分性や裁量権)の文脈だけでなく、家族法の知識を前提とした在留資格の解釈として答案に用いる。特に「有責配偶者の法理」は民法上の離婚請求の可否に関するものであり、入管法上の在留資格の存否とは別問題であるという切り分けが、答案作成上のポイントとなる。
事件番号: 平成6(行ツ)183 / 裁判年月日: 平成8年7月2日 / 結論: 棄却
出入国管理及び難民認定法別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格をもって本邦における在留を継続していた外国人につき、法務大臣が、右外国人と日本人である配偶者とが長期間にわたり別居していたことなどから、右外国人の本邦における活動は、日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当しないと判断し、右外国人の意に反して、…
事件番号: 平成6(行ツ)152 / 裁判年月日: 平成10年4月10日 / 結論: 破棄自判
再入国不許可処分を受けた者が本邦から出国した場合には、右不許可処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。
事件番号: 平成6(行ツ)153 / 裁判年月日: 平成10年4月10日 / 結論: 棄却
法務大臣が、日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法一条の規定に基づく許可を受けて本邦で永住することができる地位を有していた者に対し、外国人登録法(昭和六二年法律第一〇二号による改正前のもの)一四条一項に基づく指紋の押なつを拒否していることを理由とし…
事件番号: 平成1(行ツ)2 / 裁判年月日: 平成4年11月16日 / 結論: 棄却
我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されていない。