生活保護を受けている者が,保護を受け始めて間もない時期に,外国への渡航費用として約7万円という金額の支出をすることができたなど判示の事実関係の下においては,同人が,そのころ少なくとも上記渡航費用を支出することができるだけの額の,本来その最低限度の生活の維持のために活用すべき金銭を保有していたことが明らかであり,上記渡航費用の金額を超えない金額を,上記支出をした月の分の生活扶助の金額から減じ,後の月の分の生活扶助から差し引く旨の保護変更決定は,適法である。
生活保護を受け始めて間もない時期に外国への渡航費用を支出した者に対する,同渡航費用の金額を超えない金額を生活扶助の金額から減じて差し引く旨の保護変更決定が,適法であるとされた事例
生活保護法4条1項,生活保護法8条1項,生活保護法12条1号,生活保護法25条2項
判旨
日本国外に居住し、国内に住所を有しない生活保護法上の要保護者であっても、同法の適用対象となり得るが、支給決定時において、要保護者が活用できる資産を保有しており、それによって生活需要を充足できる場合には、当該資産の範囲内での保護費の不支給決定は適法である。
問題の所在(論点)
日本国外に居住し国内に住所を有しない者について生活保護法の適用があるか、また、多額の現金を保有している者に対して保護を行わないとする決定の適法性(補充性の要件)。
規範
生活保護法上の「要保護者」(同法2条、6条2項)とは、生活に困窮するすべての国民を指し、居住地または現在地を有する者を含むが、日本国内に住所を有しない者であっても直ちにその対象から除外されるものではない。ただし、保護は「補充性」(同法4条)の原則に基づき、利用可能な資産、能力その他あらゆるものを生活の維持のために活用した上で行われるものである。したがって、要保護者が換金可能な資産を有しており、それにより生活需要の一部を充足できる場合には、その限度で保護の必要性は認められない。
重要事実
事件番号: 平成9(行ツ)176 / 裁判年月日: 平成13年9月25日 / 結論: 棄却
生活保護法が不法残留者を保護の対象としていないことは,憲法25条,14条1項に違反しない。
上告人は、タイ国に居住していた日本人であり、当地での入院費用等の支払いに窮したため、生活保護法に基づく医療扶助の申請を行った。処分行政庁は、上告人が申請当時に日本国内に住所を有していなかったことを理由の一つとして却下したが、予備的に、上告人が当時約320万円相当の現金を所持しており、自らの資産で当面の医療費等を賄うことが可能であったとも主張した。事実関係として、上告人は申請時に相当額の金銭を保有していたことが判明している。
あてはめ
まず、生活保護法は「困窮の程度に応じ、必要な保護を行う」ことを目的としており、住所の有無のみをもって一律に対象外とすることは法の趣旨に反する。しかし、本件において上告人は申請当時、医療費等の支払いに充当可能な現金を保有していた。生活保護法4条1項は、資産の活用を保護の要件としており、本件の現金は「活用すべき資産」に該当する。上告人が主張する不足分についても、保有していた現金の範囲内で充足可能であったと認められる以上、最低限度の生活を維持できない状態にはなかったといえる。したがって、本件不支給決定は補充性の原則に照らして正当である。
結論
日本国外に居住し国内に住所を有しない者であっても法の適用対象となり得るが、本件では活用可能な資産を保有しており補充性の要件を欠くため、不支給決定は適法である。原判決のうち上告人の請求を容認した部分は取り消される。
実務上の射程
本判決は、海外居住者の保護受給資格を否定しない一方で、資産保有状況を厳格に評価し、補充性の原則を貫徹することで、無制限な保護の拡大を抑制する判断枠組みを示したものである。
事件番号: 平成11(行ヒ)46 / 裁判年月日: 平成14年10月17日 / 結論: 破棄自判
1 日本人との婚姻関係が社会生活上の実質的基礎を失っている外国人は,その活動が日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当するということができず,出入国管理及び難民認定法別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格取得の要件を備えているとはいえない。 2 日本人と婚姻関係にある外国人が,本邦上陸後約1年3か月間の同…
事件番号: 昭和60(行ツ)92 / 裁判年月日: 平成元年3月2日 / 結論: 棄却
国民年金法(昭和五六年法律第八六号による改正前のもの)一八一条一項の障害福祉年金の支給について適用される同法五六条一項ただし書は、憲法二五条、一四条一項に違反しない。
事件番号: 平成10(行ツ)313 / 裁判年月日: 平成13年4月5日 / 結論: 棄却
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号)の締結後,いわゆる在日韓国人の軍人軍属に対して援護の措置を講ずることなく戦傷病者戦没者遺族等援護法附則2項を存置していたことは,憲法14条1項に違反するということはできない。 (補足意見がある。)