国民年金法(昭和五六年法律第八六号による改正前のもの)一八一条一項の障害福祉年金の支給について適用される同法五六条一項ただし書は、憲法二五条、一四条一項に違反しない。
国民年金法(昭和五六年法律第八六号による改正前のもの)一八一条一項の障害福祉年金の支給について適用される同法五六条一項ただし書と憲法二五条、一四条一項
憲法14条1項,憲法25条,国民年金法(昭和56年法律第86号による改正前のもの)56条1項ただし書,国民年金法(昭和56年法律第86号による改正前のもの)81条1項
判旨
社会保障上の施策において、限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことは立法府の広い裁量に属する。したがって、国民年金法の障害福祉年金の受給権者を廃疾認定日において日本国民である者に限定したことは、憲法25条及び14条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
旧国民年金法が障害福祉年金の受給権者を「廃疾認定日において日本国民である者」に限定し、認定日後に帰化した外国人を除外していたことが、憲法25条(生存権)、憲法14条1項(法の下の平等)、及び憲法98条2項(条約・国際法規の遵守)に違反しないか。
規範
憲法25条の趣旨を具体化する立法措置の選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所の審査に適しない。また、社会保障施策における在留外国人の処遇についても、外交関係、国際情勢、国内の諸事情等に照らした政治的判断にゆだねられ、限られた財源下で自国民を優先的に扱うことも許容される。憲法14条1項も合理的理由のない差別を禁止する趣旨であり、区別に合理性がある限り同条に違反しない。
重要事実
上告人は、幼少期に失明し昭和34年時点で重度の障害(旧国民年金法上の1級相当)の状態にあった大韓民国籍の者である。昭和45年に日本国籍を取得したが、昭和47年に障害福祉年金の裁定を請求したところ、処分行政庁から「昭和34年11月1日(廃疾認定日)において日本国民ではなかった」ことを理由に却下された。これを不服として、当時の国民年金法が受給資格を日本国民に限定していた「国籍条項」の憲法適合性を争った。
事件番号: 平成10(行ツ)313 / 裁判年月日: 平成13年4月5日 / 結論: 棄却
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号)の締結後,いわゆる在日韓国人の軍人軍属に対して援護の措置を講ずることなく戦傷病者戦没者遺族等援護法附則2項を存置していたことは,憲法14条1項に違反するということはできない。 (補足意見がある。)
あてはめ
本件年金は、制度発足時の経過的救済措置として設けられた全額国庫負担の無拠出制年金であり、拠出という対価がない以上、支給対象の決定にはより広範な裁量が認められる。外交・経済的事情を考慮しつつ自国民を優先することは、国の政治的判断として許容される範囲内である。したがって、認定日に日本国籍を有することを要件とすることは合理性を欠くとはいえず、帰化者に対する遡及的な特別救済措置を講じないことも立法府の裁量事項である。また、ILO条約等の国際規約も、無拠出制給付における外国人への特別規則を認めているか、あるいは抽象的権利を宣明したにとどまるため、法的拘束力に抵触するとはいえない。
結論
本件の国籍条項は、憲法25条、14条1項、98条2項のいずれにも違反せず、本件却下処分は適法である。
実務上の射程
社会保障給付における「外国人除外」の合憲性を肯定したリーディングケースである。特に、堀木訴訟で示された立法裁量の法理を在留外国人の権利制限にも適用した点に特徴がある。ただし、後の法改正や条約批准状況(難民条約加入等)により、現在の実務上は多くの社会保障制度から国籍条項が撤廃されているため、答案上は「当時の制度」としての合理性を論じる際に用いる。
事件番号: 平成18(行ツ)227 / 裁判年月日: 平成19年10月9日 / 結論: 棄却
1 立法府が,(1)国民年金法(平成元年法律第86号による改正前のもの)において,同法7条1項1号イ所定の学生等につき,国民年金の強制加入による被保険者とせず,任意加入のみを認めることとし,これに伴い上記学生等を強制加入による被保険者との間で加入及び保険料納付義務の免除規定の適用に関して区別したこと,及び(2)上記改正…
事件番号: 平成17(行ツ)246 / 裁判年月日: 平成19年9月28日 / 結論: 棄却
1 (1)国民年金法(平成元年法律第86号による改正前のもの)が,同法7条1項1号イ(昭和60年法律第34号による改正前の国民年金法7条2項8号)所定の学生等につき,国民年金の強制加入による被保険者とせず,任意加入のみを認めることとし,これに伴い上記学生等を強制加入による被保険者との間で加入及び保険料納付義務の免除規定…
事件番号: 平成9(行ツ)176 / 裁判年月日: 平成13年9月25日 / 結論: 棄却
生活保護法が不法残留者を保護の対象としていないことは,憲法25条,14条1項に違反しない。
事件番号: 平成12(行ツ)191 / 裁判年月日: 平成14年7月18日 / 結論: 棄却
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号)の締結後,いわゆる在日韓国人である旧軍人等に対して何らかの措置を講ずることなく恩給法9条1項3号を存置していたことは,憲法14条1項に違反するということはできない。