財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号)の締結後,いわゆる在日韓国人である旧軍人等に対して何らかの措置を講ずることなく恩給法9条1項3号を存置していたことは,憲法14条1項に違反するということはできない。
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号)の締結後いわゆる在日韓国人である旧軍人等について恩給法9条1項3号を存置したことと憲法14条1項
憲法14条1項,恩給法9条1項3号
判旨
恩給法が旧軍人等の恩給受給資格を日本国籍を有する者に限定し、平和条約により国籍を喪失した在日韓国人を除外していることは、外交的解決が予定されていた等の合理的理由がある。戦争犠牲に対する補償の在り方は立法府の広い裁量に委ねられており、何ら措置を講じないことが直ちに憲法14条1項や29条3項に違反することはない。
問題の所在(論点)
1. 恩給法9条1項3号が、日本国籍を喪失した旧軍人等を恩給の対象外としていることは、憲法14条1項に違反するか。 2. 在日韓国人であった旧軍人等の戦争損害に対し補償をしないことが、憲法29条3項に違反するか。
規範
憲法14条1項は、事実関係上の差異を理由とする区別が合理性を有する限り、これを禁止しない。特に社会保障上の施策や戦争犠牲に対する補償は、外交関係、国際情勢、財政状況等を踏まえた高度に政策的な考慮が必要であり、立法府の裁量的判断に委ねられる。その判断が裁量権の範囲を逸脱・濫用しない限り、合憲とされる。
重要事実
上告人は、第二次世界大戦において日本軍に従事し、戦後シベリアに抑留された元軍人(在日韓国人)である。サンフランシスコ平和条約の発効により日本国籍を喪失した。昭和28年の恩給法改正により旧軍人等への恩給支給が復活したが、同法9条1項3号の国籍条項に基づき、日本国籍を持たない上告人は受給資格を認められなかった。日韓請求権協定後も、日韓両国から補償されない状態が続いたため、憲法14条1項(平等原則)および29条3項(正当な補償)違反を主張して提訴した。
事件番号: 平成12(行ツ)106 / 裁判年月日: 平成13年11月16日 / 結論: 棄却
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号)を受けて,旧日本軍の軍人であったが日本国との平和条約により日本国籍を喪失した大韓民国に在住する韓国人について恩給法9条1項3号を存置することとし,その後も存置していたことは,憲法14条1項に違反するということはで…
あてはめ
1. 恩給法の国籍条項について、朝鮮人であった旧軍人等の請求権処理は平和条約により両政府間の外交交渉に委ねることが予定されていた。この外交的解決の予定には十分な合理的根拠がある。また、日韓請求権協定締結後の対応も、高度な政治・外交的判断を要する事項であり、何ら措置を講じないことが立法府の裁量を逸脱したものとはいえない。 2. シベリア抑留による損害は、第二次世界大戦及び敗戦から生じた「戦争犠牲」に属する。これに対する補償は憲法29条3項が想定する特定の財産権への侵害(特別の犠牲)には当たらず、同条項に基づき直接補償を求めることはできない。
結論
恩給法9条1項3号は憲法14条1項に違反せず、また憲法29条3項に基づく補償請求も認められない。上告棄却。
実務上の射程
社会保障的施策や戦争損害の補償における「国籍による区別」の合憲性判定において、立法府の広範な裁量を認める枠組みとして機能する。特に、外交的配慮が絡む事案では裁量が極めて広く、憲法29条3項の「特別の犠牲」の該当性を否定する文脈でも引用される。
事件番号: 平成10(行ツ)313 / 裁判年月日: 平成13年4月5日 / 結論: 棄却
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号)の締結後,いわゆる在日韓国人の軍人軍属に対して援護の措置を講ずることなく戦傷病者戦没者遺族等援護法附則2項を存置していたことは,憲法14条1項に違反するということはできない。 (補足意見がある。)
事件番号: 昭和60(行ツ)92 / 裁判年月日: 平成元年3月2日 / 結論: 棄却
国民年金法(昭和五六年法律第八六号による改正前のもの)一八一条一項の障害福祉年金の支給について適用される同法五六条一項ただし書は、憲法二五条、一四条一項に違反しない。
事件番号: 昭和38(オ)694 / 裁判年月日: 昭和44年12月24日 / 結論: 棄却
一、恩給法の一部を改正する法律(昭和二八年法律第一五五号)附則一〇条にいう旧軍人または旧準軍人の「遺族」の範囲は、日本国憲法施行の日の前日である昭和二二年五月二日までに給与事由の生じた場合については、恩給法の一部を改正する法律(昭和二三年法律第一八五号)による改正前の恩給法七二条一項の定めるところによる。 二、恩給法の…