生活保護法が不法残留者を保護の対象としていないことは,憲法25条,14条1項に違反しない。
生活保護法が不法残留者を保護の対象としていないことと憲法25条,14条1項
憲法14条1項,憲法25条, 生活保護法1条,生活保護法2条
判旨
生活保護法が不法残留者を保護の対象としないことは、立法府の広い裁量にゆだねられた事項であり、憲法25条及び14条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
生活保護法が不法残留者を保護の対象としていないことが、憲法25条(生存権)および14条1項(法の下の平等)に違反するか。
規範
憲法25条1項は国が国民に対して具体的義務を有することを規定したものではなく、同条の趣旨に応じた具体的立法措置の選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられる。不法残留者を保護の対象に含めるか否かも立法府の裁量の範囲内であり、医師法19条1項等の存在を考慮して判断することが認められる。また、保護の対象としないことが合理的理由のない不当な差別にあたらない限り、憲法14条1項にも反しない。
重要事実
不法残留者である上告人は、交通事故に遭遇して傷害を負い、緊急に治療を要する状態にあった。そこで、上告人は生活保護法に基づく保護の開始を申請したが、被上告人(行政庁)は、上告人が不法残留者であることを理由に却下処分を行ったため、上告人がその取消しを求めて提訴した。
事件番号: 平成17(行ヒ)47 / 裁判年月日: 平成20年2月28日 / 結論: 破棄自判
生活保護を受けている者が,保護を受け始めて間もない時期に,外国への渡航費用として約7万円という金額の支出をすることができたなど判示の事実関係の下においては,同人が,そのころ少なくとも上記渡航費用を支出することができるだけの額の,本来その最低限度の生活の維持のために活用すべき金銭を保有していたことが明らかであり,上記渡航…
あてはめ
生活保護法の規定・趣旨に照らせば、同法が不法残留者を対象外としていることは明らかである。不法残留者が緊急に治療を要する場合であっても、医師法19条1項による応招義務等の別制度が存在することを考慮すれば、生活保護法の対象から除外することは立法府の合理的な裁量判断の範囲内といえる。したがって、この区別には合理的理由があり、不当な差別的取扱いには当たらない。
結論
生活保護法が不法残留者を保護対象外とすることは、憲法25条および14条1項に違反せず、却下処分は適法である。
実務上の射程
生存権に関するプログラム規定説・立法裁量論を再確認する判例である。外国人の人権全般についてはマクリーン事件判決が先例となるが、本判決は特に不法残留者という法的地位、および社会保障という給付的側面における裁量の幅を示しており、答案では「権利の性質」と「在留資格の有無」を考慮した裁量審査の枠組みとして用いる。
事件番号: 平成10(行ツ)313 / 裁判年月日: 平成13年4月5日 / 結論: 棄却
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号)の締結後,いわゆる在日韓国人の軍人軍属に対して援護の措置を講ずることなく戦傷病者戦没者遺族等援護法附則2項を存置していたことは,憲法14条1項に違反するということはできない。 (補足意見がある。)
事件番号: 昭和60(行ツ)92 / 裁判年月日: 平成元年3月2日 / 結論: 棄却
国民年金法(昭和五六年法律第八六号による改正前のもの)一八一条一項の障害福祉年金の支給について適用される同法五六条一項ただし書は、憲法二五条、一四条一項に違反しない。
事件番号: 昭和39(行ツ)14 / 裁判年月日: 昭和42年5月24日 / 結論: その他
生活保護処分に関する裁決の取消訴訟は、被保護者の死亡により、当然終了する。