生活保護処分に関する裁決の取消訴訟は、被保護者の死亡により、当然終了する。
被保護者の死亡と生活保護処分に関する裁決取消訴訟承継の成否
民訴法208条,生活保護法59条,行政事件訴訟法9条
判旨
生活保護受給権は被保護者本人の最低限度の生活を維持するための一身専属的な権利であり、相続の対象とはならない。また、憲法25条1項は直接的に具体的権利を付与するものではなく、生活保護法に基づく保護基準の設定は、厚生大臣の合理的な裁量に委ねられており、その限界を逸脱・濫用しない限り違法とはならない。
問題の所在(論点)
1. 生活保護法に基づく保護受給権および受給中の訴訟承継の可否(相続性の有無)。 2. 憲法25条1項の法的性格および生活保護法に基づく保護基準設定における厚生大臣の裁量権の範囲。
規範
1. 生活保護受給権および既に遅滞にある扶助の給付請求権は、被保護者の最低限度の生活維持を目的とする一身専属的権利であり、相続の対象とはならない。 2. 憲法25条1項は国の責務を宣言したにとどまり、具体的権利は生活保護法により初めて付与される。何が健康で文化的な最低限度の生活かの認定は、厚生大臣の合目的的な裁量に委ねられ、著しく低い基準の設定等、裁量権の限界逸脱・濫用がある場合に限り違法となる。
重要事実
肺結核患者であった上告人は、実兄からの仕送り(月額1,500円)を受けたことにより、福祉事務所長から月額600円の生活扶助を打ち切られ、送金額の一部を医療費に充当する保護変更決定を受けた。上告人は、同決定の根拠となった生活扶助基準(月額600円の日用品費等)が憲法25条および生活保護法に違反し、最低限度の生活基準に足りないとして取消訴訟を提起したが、上告審係属中に死亡した。
事件番号: 平成22(行ヒ)367 / 裁判年月日: 平成24年4月2日 / 結論: その他
生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定に係る厚生労働大臣の判断の適否に関し,(1)老齢加算に見合う高齢者の特別な需要の有無に係る評価については統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等につき,(2)3年間の段階的な減額を経て廃止す…
あてはめ
1. 保護受給権は、被保護者自身の生存維持を目的とし、法59条等の趣旨から譲渡も相続も許されない一身専属権であるため、上告人の死亡により本件訴訟は当然に終了し、相続人による承継は認められない。 2. 保護基準の適否については、抽象的な相対的概念である「最低限度の生活」の具体化において、国の財政状態や国民の一般的生活水準、予算配分等の諸要素を考慮することは厚生大臣の裁量に属する。本件基準は当時のマーケット・バスケット方式に基づき設定されており、その後の経済変動に伴う実態との乖離も、改訂に要する期間内であれば、裁量権の逸脱・濫用とは認められない。
結論
本件訴訟は、上告人の死亡によって終了した。また、本件生活扶助基準の設定および保護変更決定に、裁量権の限界逸脱・濫用としての違法は認められない。
実務上の射程
行政訴訟における原告死亡時の訴訟終了(一身専属権)の論理として重要。また、憲法25条のプログラム規定説的解釈および行政裁量の「専門技術的な裁量」の限界を示すリーディングケースとして、憲法・行政法双方の答案で引用される。
事件番号: 平成9(行ツ)176 / 裁判年月日: 平成13年9月25日 / 結論: 棄却
生活保護法が不法残留者を保護の対象としていないことは,憲法25条,14条1項に違反しない。
事件番号: 平成22(行ツ)392 / 裁判年月日: 平成24年2月28日 / 結論: 棄却
生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下においては,その改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえず,生活保護法3条又は8条2項の規定に違反しない。 (1)ア 上記改定開始の5年前には,…
事件番号: 平成29(行ヒ)292 / 裁判年月日: 平成30年12月18日 / 結論: 破棄自判
勤労収入についての適正な届出をせずに不正に保護を受けた者に対する生活保護法(平成25年法律第104号による改正前のもの)78条に基づく費用徴収額決定に係る徴収額の算定に当たり,当該勤労収入に対応する基礎控除の額に相当する額を控除しないことは,違法であるとはいえない。 基礎控除:昭和36年4月1日付け厚生事務次官通知「生…