生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定に係る厚生労働大臣の判断の適否に関し,(1)老齢加算に見合う高齢者の特別な需要の有無に係る評価については統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等につき,(2)3年間の段階的な減額を経て廃止するという激変緩和措置等の内容については被保護者の生活への影響の程度やそれが上記措置等によって緩和される程度等につき,何ら審理を尽くすことなく,厚生労働省の審議会に設置された委員会の意見を踏まえた検討がされていないとした上で直ちに上記改定が裁量権の範囲の逸脱又はその濫用によるものとして違法であるとした原審の判断には,違法がある。 (意見がある。)
生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定が違法であるとした原審の判断に違法があるとされた事例
生活保護法3条,生活保護法8条,生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号。平成16年厚生労働省告示第130号による改正前のもの)別表第1第2章2
判旨
厚生労働大臣による生活保護の老齢加算廃止等の保護基準改定は、専門技術的・政策的見地に基づく広範な裁量権を有するが、その判断過程における過誤や客観的数値との合理的関連性の欠如、または被保護者の期待利益への配慮不足による著しい妥当性の欠如がある場合には、裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法となる。
問題の所在(論点)
生活保護法による「老齢加算」の廃止を内容とする保護基準の改定、およびこれに基づく保護変更決定が、生活保護法56条、8条2項等に照らして適法か。特に、大臣の裁量権の範囲とその審査の在り方が問題となる。
規範
1. 生活保護法56条は保護決定後の変更手続を規律するものであり、保護基準自体の改定は同条ではなく、同法8条2項により規律される。 2. 保護基準の改定は、厚生労働大臣に専門技術的かつ政策的見地からの裁量権が認められる。裁判所は、①特別な需要の存否に関する判断過程に過誤・欠落があるか、統計等の客観的数値と合理的関連性があるか、②期待利益の喪失を緩和する激変緩和措置等の判断が被保護者の生活に看過し難い影響を及ぼさないか、等の観点から審査すべきである。
事件番号: 平成22(行ツ)392 / 裁判年月日: 平成24年2月28日 / 結論: 棄却
生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下においては,その改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえず,生活保護法3条又は8条2項の規定に違反しない。 (1)ア 上記改定開始の5年前には,…
重要事実
1. 老齢加算は70歳以上の者の特別な需要(教養費、被服費等)を賄うものとして長年支給されてきたが、厚生労働大臣は「本件改定」により、3年間で段階的に減額し廃止した。 2. 改定の根拠として、一般低所得世帯の消費支出を調査した結果、70歳以上の需要が60代より少ないという「中間取りまとめ」等が示された。 3. 福祉事務所長らは、本件改定に基づき被上告人らに対し保護変更決定を行った。
あてはめ
1. 生活扶助基準の改定は、最低限度の生活という抽象的概念を具体化する高度の政策的判断である。 2. 老齢加算の根拠たる特別な需要が認められないとの判断(①)に関し、厚生労働大臣は、専門委員会の調査結果に基づき、客観的数値との合理的関連性や専門的知見との整合性を検討しているといえる。 3. 期待利益への配慮(②)に関しても、3年間の段階的減額という激変緩和措置を講じ、定期的な検証を継続している点から、直ちに裁量権の逸脱があるとは断定できない。 4. 原審は、専門委員会の意見が法的拘束力を持たないにもかかわらず、その一部の検討不足のみを理由に違法とした点で、審理不尽の誤りがある。
結論
本件改定が直ちに違法とはいえず、判断過程の合理性や被保護者への影響をさらに審理させるため、原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
厚生労働大臣に認められる広範な裁量を前提としつつ、「判断過程の合理性(統計との関連性)」と「手続的適正(激変緩和措置)」という二段階の審査枠組みを提示した。生存権に関わる不利益変更における司法審査の密度を示した重要な指針となる。
事件番号: 令和5(行ヒ)397 / 裁判年月日: 令和7年6月27日 / 結論: その他
1 平成25年から平成27年にかけて行われた、物価変動率のみを直接の指標として基準生活費を一律に減ずることをその内容に含む、生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)中の生活扶助基準の改定は、次の⑴~⑷など判示の事情の下では、その厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条…
事件番号: 令和6(行ヒ)170 / 裁判年月日: 令和7年6月27日 / 結論: その他
1 平成25年から平成27年にかけて行われた、物価変動率のみを直接の指標として基準生活費を一律に減ずることをその内容に含む、生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)中の生活扶助基準の改定は、次の⑴~⑷など判示の事情の下では、その厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条…
事件番号: 平成29(行ヒ)292 / 裁判年月日: 平成30年12月18日 / 結論: 破棄自判
勤労収入についての適正な届出をせずに不正に保護を受けた者に対する生活保護法(平成25年法律第104号による改正前のもの)78条に基づく費用徴収額決定に係る徴収額の算定に当たり,当該勤労収入に対応する基礎控除の額に相当する額を控除しないことは,違法であるとはいえない。 基礎控除:昭和36年4月1日付け厚生事務次官通知「生…
事件番号: 昭和39(行ツ)14 / 裁判年月日: 昭和42年5月24日 / 結論: その他
生活保護処分に関する裁決の取消訴訟は、被保護者の死亡により、当然終了する。