勤労収入についての適正な届出をせずに不正に保護を受けた者に対する生活保護法(平成25年法律第104号による改正前のもの)78条に基づく費用徴収額決定に係る徴収額の算定に当たり,当該勤労収入に対応する基礎控除の額に相当する額を控除しないことは,違法であるとはいえない。 基礎控除:昭和36年4月1日付け厚生事務次官通知「生活保護法による保護の実施要領について」第8-3-(4)に基づき,保護の実施機関が,保護受給世帯の収入を認定する際に,被保護者の収入金額,居住地,同一世帯中で勤労収入等を得る者の数等によって定められた額を,届出がされた収入金額から控除する取扱い
勤労収入についての適正な届出をせずに不正に保護を受けた者に対する生活保護法(平成25年法律第104号による改正前のもの)78条に基づく費用徴収額決定に係る徴収額の算定に当たり基礎控除の額に相当する額を控除しないことの適否
生活保護法(平成25年法律第104号による改正前のもの)78条,生活保護法61条
判旨
生活保護法上の勤労収入の届出を怠り不正に保護を受けた者に対し、法78条に基づき費用を徴収する場合、本来適正な届出があれば認められたはずの「基礎控除」相当額を控除せずに徴収額を算定することは、同条の趣旨に照らし適法である。
問題の所在(論点)
生活保護法61条の届出義務に違反して不正に保護を受けた者から、同法78条に基づき費用を徴収する場合の算定において、勤労収入に対応する「基礎控除」相当額を控除しないことは許されるか。同条の徴収額の範囲が問題となる。
規範
生活保護法78条は、保護制度の悪用から制度を守ることを目的とする。被保護者が収入状況を偽り不正に保護を受けた場合、当該収入のうち最低限度の生活維持のために活用すべきであった部分は広く同条の徴収対象となる。基礎控除は適正な届出を前提とした運用上の取扱いにすぎず、不正受給の場合にまで当該額を被保護者に保持させるべき理由はない。したがって、費用徴収額の算定において基礎控除額を控除しないことは適法である。
事件番号: 平成22(行ツ)392 / 裁判年月日: 平成24年2月28日 / 結論: 棄却
生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下においては,その改定に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとはいえず,生活保護法3条又は8条2項の規定に違反しない。 (1)ア 上記改定開始の5年前には,…
重要事実
生活保護受給世帯の世帯主である被上告人は、同居する長男が就労により約234万円の勤労収入を得ていた事実を知りながら、約1年間にわたり届出を行わず、保護費を不正に受給した。実施機関は、調査により発覚した当該勤労収入の全額(所得税控除後)を徴収対象とする決定を行った。これに対し被上告人は、適正に届け出ていれば「基礎控除」として収入認定から除外されたはずの約38万円分については、徴収額から控除すべきであるとして争った。
あてはめ
生活保護法4条1項の補足性の原理によれば、勤労収入は本来最低限度の生活維持に活用されるべきものである。基礎控除は勤労意欲の助長等のための運用にすぎず、届出義務(法61条)を尽くさない不正受給者にまでその利益を及ぼす必要はない。本件において被上告人は長男の就労を知りながら秘匿しており、保護制度を悪用したものといえる。したがって、実施機関が基礎控除額を差し引かずに徴収額を算定したことは、不正を抑止し制度の適正を維持する法78条の趣旨に適合し、正当な評価として是認される。
結論
法78条に基づく費用徴収額の算定にあたり、勤労収入に対応する基礎控除額を控除しないことは違法ではない。
実務上の射程
不正受給に対する制裁的側面を肯定した判例であり、答案上は「適正な届出を前提とする利益(控除等)は、不正受給者には付与されない」という論理で活用する。徴収額の範囲について、単なる差額説(適正届出時の支給額との差)ではなく、制度趣旨に遡った限定を許さない立場を示す際に重要となる。
事件番号: 平成22(行ヒ)367 / 裁判年月日: 平成24年4月2日 / 結論: その他
生活扶助の老齢加算の廃止を内容とする生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)の改定に係る厚生労働大臣の判断の適否に関し,(1)老齢加算に見合う高齢者の特別な需要の有無に係る評価については統計等の客観的な数値等との合理的関連性や専門的知見との整合性の有無等につき,(2)3年間の段階的な減額を経て廃止す…
事件番号: 令和5(行ヒ)397 / 裁判年月日: 令和7年6月27日 / 結論: その他
1 平成25年から平成27年にかけて行われた、物価変動率のみを直接の指標として基準生活費を一律に減ずることをその内容に含む、生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)中の生活扶助基準の改定は、次の⑴~⑷など判示の事情の下では、その厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条…
事件番号: 平成11(行ツ)38 / 裁判年月日: 平成16年3月16日 / 結論: 棄却
1 生活保護法による保護を受けている者が同法の趣旨目的にかなった目的と態様で保護金品又はその者の金銭若しくは物品を原資としてした貯蓄等は,同法4条1項にいう「資産」又は同法(平成11年法律第160号による改正前のもの)8条1項にいう「金銭又は物品」に当たらない。 2 生活保護法による保護を受けている者が,同一世帯の構成…
事件番号: 令和6(行ヒ)170 / 裁判年月日: 令和7年6月27日 / 結論: その他
1 平成25年から平成27年にかけて行われた、物価変動率のみを直接の指標として基準生活費を一律に減ずることをその内容に含む、生活保護法による保護の基準(昭和38年厚生省告示第158号)中の生活扶助基準の改定は、次の⑴~⑷など判示の事情の下では、その厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条…