1 外国人が国民健康保険法5条所定の「住所を有する者」に該当するかどうかを判断する際には,在留資格の有無,その者の有する在留資格及び在留期間が重要な考慮要素となり,在留資格を有しない外国人がこれに該当するためには,単に保険者である市町村の区域内に居住しているという事実だけでは足りず,少なくとも,当該外国人が当該市町村を居住地とする外国人登録をして在留特別許可を求めており,入国の経緯,入国時の在留資格の有無及び在留期間,その後における在留資格の更新又は変更の経緯,配偶者や子の有無及びその国籍等を含む家族に関する事情,我が国における滞在期間,生活状況等に照らし,当該市町村の区域内で安定した生活を継続的に営み,将来にわたってこれを維持し続ける蓋然性が高いと認められることが必要である。 2 寄港地上陸許可を得て上陸し,上陸期間経過後も我が国に残留している外国人甲は,出生国での永住資格を喪失し,国籍も確認されない特殊な境遇から,やむなく残留し続けたもので,自ら入国管理局に出頭したにもかかわらず,不法滞在状態を解消することができなかったこと,甲の我が国での滞在期間は約22年間に及んでおり,国民健康保険の被保険者証の交付請求当時の居住地において稼働しながら,約13年間にわたり妻と我が国で出生した2人の子と共に家庭生活を営んできたこと,上記請求前に外国人登録をして在留特別許可を求めていたことなど判示の事情の下においては,国民健康保険法5条所定の「住所を有する者」に該当する。 (1,2につき意見がある。)
1 外国人が国民健康保険法5条所定の「住所を有する者」に該当するかどうかを判断する際の考慮要素 2 我が国に不法に残留している外国人が国民健康保険法5条所定の「住所を有する者」に該当するとされた事例
国民健康保険法5条,国民健康保険法7条,出入国管理及び難民認定法(平成11年法律第135号による改正前のもの)24条,出入国管理及び難民認定法2条の2,出入国管理及び難民認定法20条,出入国管理及び難民認定法21条,出入国管理及び難民認定法50条
判旨
在留資格を有しない外国人であっても、外国人登録を行い、在留特別許可を申請しており、国内での生活状況等から将来にわたって安定した生活を継続する蓋然性が高いと認められる場合には、国民健康保険法5条の「住所を有する者」に該当し、不交付処分は違法となる。ただし、解釈に争いがあり相当の根拠に基づき行われた処分については、国家賠償法上の過失は否定される。
問題の所在(論点)
在留資格を有しない外国人が、国民健康保険法5条の「住所を有する者」として被保険者の資格を取得し得るか。また、同法5条の解釈を誤ってなされた不交付処分について、公務員の過失が認められるか。
規範
国民健康保険法5条の「住所を有する者」とは、市町村の区域内に継続的に生活の本拠を有する者をいう。一般に、社会保障制度の適用対象は国内に適法な居住関係を有する者に限られるのが原則であるが、国民健康保険法の規定・経緯等に照らせば、在留資格のない者を一律に除外する趣旨とは解されない。在留資格のない者が同条の「住所を有する者」に該当するには、①居住地とする外国人登録をしていること、②在留特別許可を求めていること、③入国の経緯、滞在期間、家族状況、生活状況等に照らし、当該区域内で安定した生活を継続的に営み、将来にわたってこれを維持し続ける蓋然性が高いと認められることが必要である。
重要事実
上告人は在留資格を喪失した後、寄港地上陸許可を得て再入国したが、そのまま不法残留し約22年間にわたり滞在した。その間、調理師として稼働し、日本で生まれた子を含む家族と約13年間横浜市で同居していた。上告人は外国人登録を行い、長男の病気を契機に在留特別許可を申請するとともに、被保険者証の交付を請求(本件請求)したが、在留資格がないことを理由に拒否処分(本件処分)を受けた。その後、上告人らは在留特別許可を取得したが、本件処分の違法を理由に国家賠償を求めて提訴した。
あてはめ
上告人は、外国人登録を行い、在留特別許可を申請中であった。入国の経緯は特殊な境遇にあり、滞在期間も22年と長期に及んでいた。また、横浜市において家族と共に13年間にわたり定住して安定した家庭生活を営んでおり、実際に本件請求の約半年後に在留特別許可を得ている。これらの事実に照らせば、将来にわたって生活を維持し続ける蓋然性が高く、同法5条の「住所を有する者」に該当するため、本件処分は違法である。しかし、当時、在留資格のない外国人の被保険者資格については定説がなく、否定的な下級審裁判例も存在していた。担当者が当時の通知に従って処分を行ったことには相当の根拠があり、職務上の注意義務に違反したとはいえず、過失は認められない。
結論
本件処分は客観的には違法であるが、担当公務員に過失が認められないため、国家賠償請求は棄却される。
実務上の射程
行政処分が後に違法と判断されても、当時の解釈に相当の根拠がある場合には、直ちに国家賠償法1条1項の過失が認められないことを示した。特に、行政通達に従った処分がなされ、かつ裁判例や学説が分かれている状況下での過失認定における考慮要素として重要である。
事件番号: 平成17(行ヒ)47 / 裁判年月日: 平成20年2月28日 / 結論: 破棄自判
生活保護を受けている者が,保護を受け始めて間もない時期に,外国への渡航費用として約7万円という金額の支出をすることができたなど判示の事実関係の下においては,同人が,そのころ少なくとも上記渡航費用を支出することができるだけの額の,本来その最低限度の生活の維持のために活用すべき金銭を保有していたことが明らかであり,上記渡航…
事件番号: 平成11(行ヒ)46 / 裁判年月日: 平成14年10月17日 / 結論: 破棄自判
1 日本人との婚姻関係が社会生活上の実質的基礎を失っている外国人は,その活動が日本人の配偶者の身分を有する者としての活動に該当するということができず,出入国管理及び難民認定法別表第二所定の「日本人の配偶者等」の在留資格取得の要件を備えているとはいえない。 2 日本人と婚姻関係にある外国人が,本邦上陸後約1年3か月間の同…