難民不認定処分を受けた者が退去強制令書の執行により本邦から出国した場合には、右処分の取消しを求める訴えめ利益は失われる。
退去強制令書の執行による本邦からの出国と難民不認定処分の取消しを求める訴えの利益
行政事件訴訟法9条,出入国管理及び難民認定法52条,出入国管理及び難民認定法61条の2
判旨
難民不認定処分の取消訴訟において、原告が退去強制令書の執行により既に出国した場合には、もはや難民認定を受ける余地はなく、訴えの利益が失われる。
問題の所在(論点)
難民不認定処分の取消しを求める訴訟の係属中に、原告が退去強制令書の執行により出国した場合、当該訴訟の「訴えの利益」は失われるか。
規範
行政事件訴訟法9条1項後段の「法律上の利益」を欠く場合、訴えの利益が認められない。難民不認定処分の取消訴訟において、処分の取消しによって回復すべき法的利益が消滅したといえる事情がある場合には、訴えは不適法となる。
重要事実
上告人(原告)は、難民認定を申請したが不認定処分を受けたため、その取消しを求めて提訴した。しかし、訴訟の係属中に退去強制令書が執行され、上告人は既に本邦を出国した。
あてはめ
事件番号: 平成6(行ツ)152 / 裁判年月日: 平成10年4月10日 / 結論: 破棄自判
再入国不許可処分を受けた者が本邦から出国した場合には、右不許可処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。
上告人は退去強制令書の執行によって既に本邦を出国している。この事実により、上告人が今後難民の認定を受ける余地はもはや存在しない。したがって、難民不認定処分の取消しを求める法的実益は消滅したと評価される。
結論
本件難民不認定処分の取消しを求める訴えの利益は失われたため、訴えは不適法として却下されるべきである。
実務上の射程
本判決は、退去強制と難民認定の関係における訴えの利益の限界を示したものである。答案上は、事後的に原告の地位や状況が変化し、処分の取消しによって得られる利益が事実上消滅した場合(行訴法9条1項後段の議論)の具体例として活用できる。
事件番号: 平成14(行フ)1 / 裁判年月日: 平成14年2月28日 / 結論: 棄却
収容令書の執行により収容された者に対し,退去強制令書が発付され,その執行がされた場合,収容令書の執行停止を求める申立ての利益は失われる。
事件番号: 平成17(行ヒ)395 / 裁判年月日: 平成18年10月5日 / 結論: 棄却
法務大臣が出入国管理及び難民認定法49条3項所定の裁決をするに当たり裁決書を作成しなかったことは出入国管理及び難民認定法施行規則(平成13年法務省令第76号による改正前のもの)43条に違反するものであるが,容疑者は退去強制事由があることを争っていないこと,同条は上記裁決をするに当たって経ることが予定されている在留特別許…
事件番号: 平成6(行ツ)153 / 裁判年月日: 平成10年4月10日 / 結論: 棄却
法務大臣が、日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法一条の規定に基づく許可を受けて本邦で永住することができる地位を有していた者に対し、外国人登録法(昭和六二年法律第一〇二号による改正前のもの)一四条一項に基づく指紋の押なつを拒否していることを理由とし…
事件番号: 昭和47(行ツ)65 / 裁判年月日: 昭和51年1月26日 / 結論: 棄却
いわゆる政治犯罪人不引渡の原則は、未だ確立した一般的な国際慣習法とは認められない。