収容令書の執行により収容された者に対し,退去強制令書が発付され,その執行がされた場合,収容令書の執行停止を求める申立ての利益は失われる。
収容令書の執行により収容された者に対して退去強制令書が発付され執行された場合における収容令書の執行停止を求める申立ての利益
出入国管理及び難民認定法39条,出入国管理及び難民認定法49条5項,出入国管理及び難民認定法52条,行政事件訴訟法25条
判旨
収容令書による収容は退去強制令書の執行を確実にする目的で行われるため、退去強制令書が発付・執行された後は、収容令書の執行停止を求める訴えの利益は失われる。
問題の所在(論点)
退去強制令書の発付・執行後において、それ以前の収容令書の執行停止を求める法律上の利益(訴えの利益)が認められるか。
規範
収容令書による収容は、退去強制事由の審査を円滑に行い、かつ退去強制令書が発付された場合の執行を確実にすることを目的とする。したがって、退去強制令書が発付・執行されたときは、収容令書はその目的を達して効力を失い、以後は退去強制令書の執行としての収容に切り替わる。
重要事実
抗告人に対し、すでに出入国管理及び難民認定法に基づく退去強制令書が発付されており、平成13年12月27日以降は同令書の執行による収容が継続していた。抗告人は、それ以前の段階で発付されていた収容令書の執行停止を申し立てた。
事件番号: 平成16(行フ)3 / 裁判年月日: 平成16年5月31日 / 結論: その他
退去強制令書の収容部分の執行により被収容者が受ける損害は,当然には行政事件訴訟法25条2項に規定する回復の困難な損害に当たらない。
あてはめ
本件では既に退去強制令書が発付され、かつ現実に執行されている。収容令書の目的は退去強制令書の執行確保にあるところ、令書が執行された時点でその目的は達成されている。したがって、先行する収容令書は失効しており、失効した処分の執行停止を求めることは、現状の収容状態に法的影響を及ぼし得ないため、訴えの利益が認められないと評価される。
結論
収容令書の執行停止を求める利益は失われており、本件申立ては不適法として却下されるべきである。
実務上の射程
行政事件訴訟法上の「訴えの利益」に関する判例である。退去強制手続の進展に伴い、先行する収容令書から後続の退去強制令書へ収容の根拠が切り替わる「処分の目的達成」を理由に、狭義の訴えの利益を否定する論法として活用できる。答案上は、現在の収容がどの令書に基づいているかを事実認定した上で、本規範を適用する。
事件番号: 平成29(行フ)3 / 裁判年月日: 平成29年12月19日 / 結論: 破棄自判
村議会の議員である者につき地方自治法92条の2の規定に該当する旨の決定がされ,その補欠選挙が行われた場合において,同選挙は上記決定の効力が停止された後に行われたものであったが,同選挙及び当選の効力に関し公職選挙法所定の期間内に異議の申出がされなかったという事実関係の下では,上記の者は,上記決定の取消判決を得ても,上記議…
事件番号: 平成2(行ト)14 / 裁判年月日: 平成2年5月1日 / 結論: 棄却
逃亡犯罪人引渡法二〇条一項に基づき逃亡犯罪人を請求国の官憲に引き渡したときは、同法一四条一項に基づく引渡命令の執行停止はその余地がなくなる。
事件番号: 平成7(し)5 / 裁判年月日: 平成7年2月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】少年院を仮退院中の者に対し退院の許可決定がなされ、その告知が行われた場合には、保護処分の執行が終了したものとして、抗告の利益が消滅する。 第1 事案の概要:少年院を仮退院中であった申立人に対し、地方更生保護委員会が退院の許可決定を行い、その決定が申立人に告知された。申立人はこの状況下で抗告を継続し…
事件番号: 平成14(行フ)11 / 裁判年月日: 平成15年3月11日 / 結論: 破棄自判
弁護士に対する戒告処分が日本弁護士連合会会則97条の3第1項に基づく公告を介して第三者の知るところとなり弁護士としての社会的信用が低下するなどの事態は,行政事件訴訟法25条2項にいう「処分により生ずる回復の困難な損害」に当たらない。