逃亡犯罪人引渡法二〇条一項に基づき逃亡犯罪人を請求国の官憲に引き渡したときは、同法一四条一項に基づく引渡命令の執行停止はその余地がなくなる。
逃亡犯罪人引渡法二〇条一項に基づき逃亡犯罪人を請求国の官憲に引き渡したことにより同法一四条一項に基づく引渡命令の執行停止の余地がなくなったとされた事例
逃亡犯罪人引渡法14条1項,逃亡犯罪人引渡法20条1項,行政事件訴訟法25条
判旨
逃亡犯罪人引渡命令の執行停止を求める申立てにおいて、既に引渡しの執行が完了した場合には、執行を停止する余地がなくなり、申立ては理由がないものとして棄却される。
問題の所在(論点)
逃亡犯罪人引渡命令の執行停止を求める申立てについて、現実に引渡しが完了した後に、なお執行停止を認める余地(訴えの利益、または申立ての理由)があるか。
規範
行政処分の執行停止の申立て等の裁判手続において、申立ての対象となる処分の執行が既に完了し、現状を維持して権利利益を保全する必要性または可能性が消滅した場合には、当該申立ては目的を達し得ないものとして、法的に理由がないものと判断される。
重要事実
抗告人は、自身に対する逃亡犯罪人引渡命令の執行停止を求めていた。しかし、記録によれば、東京拘置所長は、平成2年4月28日、逃亡犯罪人引渡法20条1項に基づき、抗告人を中華人民共和国の官憲に既に引き渡した。この事実に基づき、最高裁判所は執行停止の可否を判断した。
事件番号: 平成14(行フ)1 / 裁判年月日: 平成14年2月28日 / 結論: 棄却
収容令書の執行により収容された者に対し,退去強制令書が発付され,その執行がされた場合,収容令書の執行停止を求める申立ての利益は失われる。
あてはめ
本件において、抗告人が停止を求めているのは引渡命令の執行であるが、既に抗告人の身柄は外国官憲に引き渡されている。執行停止制度の目的は、処分の執行を一時的に差し止めることで回復困難な損害を避ける点にあるが、既に引渡しという事実行為が完了した以上、その執行を停止する対象が物理的・法的にも存在しない状態となっている。したがって、執行停止を命じる実益は失われているといえる。
結論
既に引渡しが完了しているため、本件引渡命令の執行を停止する余地はなく、抗告は理由がない。
実務上の射程
行政事件訴訟法における執行停止(25条)の一般論と同様、事実行為の完了により停止の目的が失われた場合の処理(却下ではなく「理由がない」として棄却する点)を示す。逃亡犯罪人引渡手続のような迅速性が求められる事案において、執行完了が申立ての運命を決定する実務上の基準となる。
事件番号: 昭和23(ク)5 / 裁判年月日: 昭和24年6月16日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】第三者異議の訴えに伴う強制執行停止決定の効力は本案の第一審判決言渡により当然に消滅し、判決における停止決定取消の裁判及び仮執行宣言は既往の効力消滅を表明するに過ぎない。したがって、控訴提起を理由とする仮執行宣言付裁判の執行停止(旧民訴法512条等)を求める申請は原則として無意義であるが、実務上は新…
事件番号: 平成26(行ト)55 / 裁判年月日: 平成26年8月19日 / 結論: 棄却
逃亡犯罪人引渡法35条1項の規定が,同法14条1項に基づく逃亡犯罪人の引渡命令につき,行政手続法第3章の規定の適用を除外し,逃亡犯罪人引渡法10条1項3号の決定がされたのを受けて行われる上記命令の発令手続において改めて当該逃亡犯罪人に弁明の機会を与えることを要しないものとしていることは,憲法31条の法意に反しない。
事件番号: 昭和34(ク)34 / 裁判年月日: 昭和34年3月2日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に許容された場合に限定される。民事事件においては、特別抗告(旧民事訴訟法419条の2、現行336条)の事由がある場合に限り、最高裁判所への抗告が適法となる。 第1 事案の概要:抗告人が原決定(詳細は判決文からは不明)に不服を申し立て、最高…
事件番号: 平成22(行ト)63 / 裁判年月日: 平成22年11月25日 / 結論: 棄却
検察審査会法41条の6第1項所定の検察審査会による起訴をすべき旨の議決の適否については,行政事件訴訟を提起して争うことはできず,これを本案とする行政事件訴訟法25条2項の執行停止の申立てをすることもできない。