弁護士に対する戒告処分が日本弁護士連合会会則97条の3第1項に基づく公告を介して第三者の知るところとなり弁護士としての社会的信用が低下するなどの事態は,行政事件訴訟法25条2項にいう「処分により生ずる回復の困難な損害」に当たらない。
弁護士に対する戒告処分が公告されることによる社会的信用の低下等と行政事件訴訟法25条2項にいう「処分により生ずる回復の困難な損害」
行政事件訴訟法25条2項,弁護士法56条,弁護士法57条,日本弁護士連合会会則97条の3第1項
判旨
弁護士に対する戒告処分はその告知により完結し、その後の公告は処分を周知させるための独立した手続である。したがって、公告の阻止を目的とする処分の効力停止や手続続行の停止は認められず、公告による社会的信用の低下も処分の効力停止の要件たる「回復困難な損害」には当たらない。
問題の所在(論点)
弁護士に対する戒告処分に基づく「公告」の法的性質と、公告による損害が行政事件訴訟法25条2項(または民事保全法等の執行停止規定)にいう「回復困難な損害」に該当するか。
規範
1. 戒告処分は告知時に効力が生じ、告知によって完結する。2. 弁護士法及び会則に基づく公告は、処分の事実を一般に周知させるための手続であり、処分の効力として行われるものでも、処分の続行手続として行われるものでもない。3. 公告による社会的信用の低下等の損害は、処分の効力停止によって法的に阻止できる性質のものではないため、執行停止の要件である「処分の執行等により生ずる回復困難な損害」には当たらない。
重要事実
弁護士である相手方が、所属する弁護士会(抗告人)から戒告処分を受けた。これに対し、相手方は当該処分に基づき日本弁護士連合会会則等により行われる「公告」がなされると、弁護士としての社会的信用が低下し回復し難い損害を被ると主張。主位的に本件処分の効力停止を、予備的に本件処分に基づく手続(公告)の続行の停止を申し立てた。原審はこれを認めたため、抗告人が抗告した。
事件番号: 平成16(行フ)3 / 裁判年月日: 平成16年5月31日 / 結論: その他
退去強制令書の収容部分の執行により被収容者が受ける損害は,当然には行政事件訴訟法25条2項に規定する回復の困難な損害に当たらない。
あてはめ
まず、戒告処分は告知によって手続が完結しており、公告は処分そのものの効力内容や付随する続行手続ではない。そのため、処分の効力を停止しても公告という事実行為を法的に阻止することはできない。次に、公告により相手方の社会的信用が低下したとしても、それは公告という周知手続による波及的影響にすぎず、処分の直接の効力から生じる損害とはいえない。したがって、公告を理由とする損害は、執行停止の要件を満たさないと解される。
結論
本件処分の効力停止や手続続行の停止によって公告を法的に阻止することはできず、申立ては却下されるべきである。
実務上の射程
執行停止の要件である「損害」は、処分自体から直接生じるものに限られる。本判例は、処分後に予定されている周知・公表手続(公告)が「処分の効力」や「続行手続」に含まれないことを明示した点に射程がある。実務上、公表を阻止する目的で本体処分の執行停止を申し立てる手法を否定する有力な根拠となる。
事件番号: 平成14(行フ)1 / 裁判年月日: 平成14年2月28日 / 結論: 棄却
収容令書の執行により収容された者に対し,退去強制令書が発付され,その執行がされた場合,収容令書の執行停止を求める申立ての利益は失われる。
事件番号: 平成29(行フ)3 / 裁判年月日: 平成29年12月19日 / 結論: 破棄自判
村議会の議員である者につき地方自治法92条の2の規定に該当する旨の決定がされ,その補欠選挙が行われた場合において,同選挙は上記決定の効力が停止された後に行われたものであったが,同選挙及び当選の効力に関し公職選挙法所定の期間内に異議の申出がされなかったという事実関係の下では,上記の者は,上記決定の取消判決を得ても,上記議…
事件番号: 平成22(行ト)63 / 裁判年月日: 平成22年11月25日 / 結論: 棄却
検察審査会法41条の6第1項所定の検察審査会による起訴をすべき旨の議決の適否については,行政事件訴訟を提起して争うことはできず,これを本案とする行政事件訴訟法25条2項の執行停止の申立てをすることもできない。
事件番号: 昭和44(ク)240 / 裁判年月日: 昭和44年9月20日 / 結論: 却下
仮処分決定に対する異議申立に伴う執行停止の申立に対し、裁判所が実質的審査をしてその許否を決したときは、その裁判に対して不服申立をすることは許されない。