仮処分決定に対する異議申立に伴う執行停止の申立に対し、裁判所が実質的審査をしてその許否を決したときは、その裁判に対して不服申立をすることは許されない。
仮処分決定に対する異議申立に伴う執行停止の申立に対する裁判と不服申立の許否
民訴法744条,民訴法756条,民訴法500条,民訴法512条
判旨
仮処分決定に対する異議申立てに伴う執行停止の裁判は、手続の付随的・暫定的性格から、裁判所の慎重な判断に委ねられるべきであり、実質的審査を経た裁判に対し独立の不服申立てをすることは許されない。
問題の所在(論点)
仮処分決定に対する異議申立てに伴いなされた執行停止の裁判に対し、独立の不服申立てをすることが許されるか。
規範
仮処分決定の執行停止は、仮処分の内容が権利保全の範囲を超えて終局的満足を得させ、又は債務者に回復困難な損害を与えるおそれがある等の例外的な場合にのみ許される。また、当該手続の付随的性格および効果の暫定的・応急的性格に鑑みれば、執行停止の許否は裁判所の慎重な判断に委ねられるべきである。したがって、裁判所が申立てにつき実質的な審査をして許否を決した場合には、民事訴訟法の準用(旧法512条2項、500条3項)により、その裁判を独立の不服申立ての対象とすることはできない。
重要事実
申請人(抗告人)は、被申請人である幼稚園に対し、従業員の地位保全および賃金の仮支払を求める仮処分を申請し、認容された。これに対し被申請人が保全異議の申立てを行うとともに、執行停止を申し立てた。第一審裁判所は、仮支払を命じる部分の一部について「回復しがたい損害を与えることが予想される」として執行停止を認めた。抗告人は、この執行停止決定の認容部分に不服があるとして抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和44(ク)239 / 裁判年月日: 昭和44年9月20日 / 結論: 却下
仮処分決定に対する異議申立に伴う執行停止の申立に対し、裁判所が実質的審査をしてその許否を決したときは、その裁判に対し不服申立をすることは許されない。
あてはめ
本件において、第一審裁判所は執行停止の申立てに対し実質的な審査を行い、仮処分執行により被申請人に回復しがたい損害が生じるおそれを認めて一部認容の判断を下している。このような実質的審査を経た裁判に対しては、手続の付随的・暫定的性格に鑑み、独立の不服申立ては許されない。また、抗告人は憲法違反(25条、28条等)を主張するが、実質は執行停止の許否の判断誤りをいう単なる法令違背の主張にとどまり、特別抗告の事由(旧法419条の2)にも該当しない。
結論
本件抗告は不服申立てが許されない裁判に対してなされたものであり、不適法として却下される。
実務上の射程
保全異議(民保26条)に伴う執行停止の裁判(同27条1項)に対する不服申立ての可否に関する準則。民事保全法下においても、27条4項により「この規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない」と明文化されており、本判例の趣旨は現行実務においても維持されている。
事件番号: 昭和24(ク)21 / 裁判年月日: 昭和24年9月28日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、民事訴訟法等の法令において特に最高裁判所への申し立てが許容されている場合に限り認められ、これに該当しない抗告は不適法である。 第1 事案の概要:抗告人らが最高裁判所に対して抗告を申し立てたが、当該抗告が法律の規定により最高裁判所に申し立てることが特に許容された類型に該当す…
事件番号: 昭和24(ク)10 / 裁判年月日: 昭和24年3月2日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法が特に最高裁判所の権限に属するものと定めた場合を除いてはすることができず、憲法判断の不当を理由としないものは不適法である。 第1 事案の概要:抗告人が、最高裁判所に対し抗告を申し立てた事案。抗告申立書の内容を精査したところ、原決定における憲法上の判断が不当であること…
事件番号: 昭和23(ク)5 / 裁判年月日: 昭和24年6月16日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】第三者異議の訴えに伴う強制執行停止決定の効力は本案の第一審判決言渡により当然に消滅し、判決における停止決定取消の裁判及び仮執行宣言は既往の効力消滅を表明するに過ぎない。したがって、控訴提起を理由とする仮執行宣言付裁判の執行停止(旧民訴法512条等)を求める申請は原則として無意義であるが、実務上は新…
事件番号: 昭和43(ク)145 / 裁判年月日: 昭和43年9月3日 / 結論: 却下
仮処分決定に対する異議申立または仮処分判決に対する上訴に伴う執行停止の許否については、原則として、これを消極に解すべく、その停止が許されるのは、きわめて例外的な場合に限られるものと解すべきであるが、例外的な場合に停止を許すことがそれ自体として憲法に反するものではない。