仮処分決定に対する異議申立に伴う執行停止の申立に対し、裁判所が実質的審査をしてその許否を決したときは、その裁判に対し不服申立をすることは許されない。
仮処分決定に対する異議申立に伴う執行停止の申立につきされた裁判に対し不服申立をすることが許されるか
民訴法744条,民訴法756条,民訴法500条,民訴法512条
判旨
仮処分決定に対する異議申立てに伴う執行停止の裁判は、手続の附随的・暫定的性格から裁判所の慎重な判断に委ねられるべきであり、実質的審査を経た許否の判断に対しては独立の不服申立ては許されない。
問題の所在(論点)
仮処分決定に対する保全異議の申立てに伴いなされた執行停止の申立て(民事保全法27条1項、52条1項参照)に対し、裁判所が実質的な審査を行って下した裁判について、独立の不服申立てをすることが許されるか。
規範
仮処分決定に対する異議申立て等に伴う執行停止の手続は、附随的かつ暫定的・応急的な性格を有するものである。そのため、裁判所が申立てについて実質的な審査をして許否を決した場合には、民事訴訟法(旧法)上の執行停止の裁判に関する規定を準用し、その裁判を独立の不服申立ての対象とすることは許されない。
重要事実
債権者Dによる従業員地位保全仮処分申請に対し、裁判所は無担保で仮処分決定を発した。債務者(抗告人)は、この仮処分決定に対し異議申立てを行うとともに執行停止を申し立てた。原審は、賃金仮払い(主文第2項)については回復しがたい損害の恐れを認め執行を停止したが、地位保全(主文第1項)については申立てを却下した。抗告人はこの却下部分を不服として抗告した。
事件番号: 昭和44(ク)240 / 裁判年月日: 昭和44年9月20日 / 結論: 却下
仮処分決定に対する異議申立に伴う執行停止の申立に対し、裁判所が実質的審査をしてその許否を決したときは、その裁判に対して不服申立をすることは許されない。
あてはめ
執行停止の裁判は、本来、権利保全の範囲を超えて終局的満足を得させる場合や回復困難な損害が生じる例外的な場合にのみ認められるべきものである。このような判断は裁判所の合理的な裁量に委ねられるべき性質のものである。本件において原審は、地位保全部分の執行停止を相当でないとして実質的審査に基づき却下しており、この判断に対して独立に不服を申し立てることは、手続の性質上認められない。抗告人が主張する憲法違反の点も、実質は審理手続の違法をいうものにすぎず、特別抗告事由にも該当しない。
結論
仮処分決定の執行停止の申立てを却下した裁判に対する抗告は不適法であり、却下されるべきである。
実務上の射程
現行の民事保全法下においても、保全異議に伴う執行停止等の裁判(同法27条、52条)に対しては「不服を申し立てることができない」と明文で規定されており(同法27条5項、52条1項)、本判例の趣旨は現行法上の運用を裏付ける法理として重要である。
事件番号: 昭和24(ク)21 / 裁判年月日: 昭和24年9月28日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、民事訴訟法等の法令において特に最高裁判所への申し立てが許容されている場合に限り認められ、これに該当しない抗告は不適法である。 第1 事案の概要:抗告人らが最高裁判所に対して抗告を申し立てたが、当該抗告が法律の規定により最高裁判所に申し立てることが特に許容された類型に該当す…
事件番号: 昭和24(ク)30 / 裁判年月日: 昭和24年6月28日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法上特に最高裁判所に申し立てることが許された場合を除き、申し立てることはできない。 第1 事案の概要:抗告人が、特定の訴訟法上の規定の根拠がないままに、最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案である。 第2 問題の所在(論点):訴訟法上に特別の規定がない場合に、最高裁判…
事件番号: 昭和23(ク)5 / 裁判年月日: 昭和24年6月16日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】第三者異議の訴えに伴う強制執行停止決定の効力は本案の第一審判決言渡により当然に消滅し、判決における停止決定取消の裁判及び仮執行宣言は既往の効力消滅を表明するに過ぎない。したがって、控訴提起を理由とする仮執行宣言付裁判の執行停止(旧民訴法512条等)を求める申請は原則として無意義であるが、実務上は新…
事件番号: 昭和24(ク)10 / 裁判年月日: 昭和24年3月2日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、訴訟法が特に最高裁判所の権限に属するものと定めた場合を除いてはすることができず、憲法判断の不当を理由としないものは不適法である。 第1 事案の概要:抗告人が、最高裁判所に対し抗告を申し立てた事案。抗告申立書の内容を精査したところ、原決定における憲法上の判断が不当であること…