仮処分決定に対する異議申立または仮処分判決に対する上訴に伴う執行停止の許否については、原則として、これを消極に解すべく、その停止が許されるのは、きわめて例外的な場合に限られるものと解すべきであるが、例外的な場合に停止を許すことがそれ自体として憲法に反するものではない。
賃金の仮払いを命ずる判決に対する控訴に伴いその執行を停止することと憲法第二五条・第二八条・第三二条
民訴法500条,民訴法512条,憲法25条,憲法28条,憲法32条
判旨
賃金の仮払いを命ずる仮処分に対する執行停止は、原則として消極に解すべきであるが、極めて例外的な場合に限り許容され、その運用は慎重を期すべきである。
問題の所在(論点)
賃金の仮払いを命ずる仮処分に対し、上訴に伴う執行停止を認めることが憲法(生存権・労働基本権・裁判を受ける権利)に違反するか、およびその許容性の判断枠組みが問題となった。
規範
仮処分決定に対する異議申立てまたは仮処分判決に対する上訴に伴う執行停止の許否については、原則としてこれを消極に解すべきであり、その停止が許されるのは「きわめて例外的な場合」に限られる。ただし、かかる例外的な場合に停止を許すこと自体は、直ちに憲法(25条、28条、32条等)に違反するものではない。
重要事実
賃金の仮払いを命ずる仮処分判決に対し、債務者(使用者)が控訴を提起した。これに伴い、民事訴訟法(当時の512条、500条。現行民保法、民訴法の規定に相当)を準用して当該仮処分の執行停止が申し立てられた。抗告人(労働者側)は、生存権等を根拠に、賃金の仮払い仮処分を停止することは憲法に違反すると主張して争った。
事件番号: 昭和25(ク)43 / 裁判年月日: 昭和25年9月25日 / 結論: 却下
仮処分判決に対して上訴が提起されたときは、仮処分の内容が、権利保全の範囲にとどまらずその終局的満足を得しめ、若しくはその執行により債務者に対し回復することのできない損害を生ぜしめる虞ある場合にかぎり、その執行の停止を求めることができる。
あてはめ
最高裁は、先行する大法廷決定等の趣旨を引用し、仮処分の執行停止は原則として否定されるべきとの立場を堅持しつつ、極めて例外的な場合に限ってこれを認める余地があるとした。本件において抗告人が主張する違憲の論理は、実質的には原決定の執行停止判断という「事実上の法令違背」を主張するものに過ぎず、憲法判断を要する適法な抗告理由には当たらないと評価された。
結論
賃金の仮払い仮処分の執行停止を認めることは直ちに違憲ではなく、極めて例外的な場合に限り許容される。本件抗告は不適法として却下される。
実務上の射程
民事保全制度において、仮処分(特に断行仮処分的な性質を持つもの)の効力を停止させることの困難さを強調する射程を持つ。答案上は、仮処分に対する執行停止の要件を厳格に解釈する際の根拠として活用できるが、具体的な「極めて例外的な場合」の内容については、本判決単体ではなく他の裁判例等の考慮要素(保全の必要性、本案の見通し、回復困難な損害等)を参照する必要がある。
事件番号: 昭和44(ク)240 / 裁判年月日: 昭和44年9月20日 / 結論: 却下
仮処分決定に対する異議申立に伴う執行停止の申立に対し、裁判所が実質的審査をしてその許否を決したときは、その裁判に対して不服申立をすることは許されない。
事件番号: 昭和23(マ)3 / 裁判年月日: 昭和23年3月3日 / 結論: 却下
仮処分を命じた判決に対し上訴の提起せられた場合、その判決の内容が、権利保全のためにする緊急処置たる範囲を逸脱して権利の終局的実現を命じているときの外、仮処分判決の執行停止決定をすることはできない。
事件番号: 昭和24(ク)21 / 裁判年月日: 昭和24年9月28日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、民事訴訟法等の法令において特に最高裁判所への申し立てが許容されている場合に限り認められ、これに該当しない抗告は不適法である。 第1 事案の概要:抗告人らが最高裁判所に対して抗告を申し立てたが、当該抗告が法律の規定により最高裁判所に申し立てることが特に許容された類型に該当す…
事件番号: 昭和23(ク)5 / 裁判年月日: 昭和24年6月16日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】第三者異議の訴えに伴う強制執行停止決定の効力は本案の第一審判決言渡により当然に消滅し、判決における停止決定取消の裁判及び仮執行宣言は既往の効力消滅を表明するに過ぎない。したがって、控訴提起を理由とする仮執行宣言付裁判の執行停止(旧民訴法512条等)を求める申請は原則として無意義であるが、実務上は新…