法務大臣が出入国管理及び難民認定法49条3項所定の裁決をするに当たり裁決書を作成しなかったことは出入国管理及び難民認定法施行規則(平成13年法務省令第76号による改正前のもの)43条に違反するものであるが,容疑者は退去強制事由があることを争っていないこと,同条は上記裁決をするに当たって経ることが予定されている在留特別許可をするかどうかの判断につき書面の作成を求めるものではなく,容疑者は特別に在留を許可すべき事情として難民に該当することを主張して争っているが上記裁決以前の退去強制手続等においてはその旨の供述をしていなかったことなど判示の事情の下においては,上記の裁決書の不作成は上記裁決及びその後の退去強制令書発付処分を取り消すべき違法事由に当たるとはいえない。 (反対意見がある。)
法務大臣が出入国管理及び難民認定法49条3項所定の裁決をするに当たり裁決書を作成しなかったことが同裁決及びその後の退去強制令書発付処分を取り消すべき違法事由に当たらないとされた事例
出入国管理及び難民認定法49条3項,出入国管理及び難民認定法(平成13年法律第136号による改正前のもの)24条4号ロ,出入国管理及び難民認定法(平成13年法律第136号による改正前のもの)50条,出入国管理及び難民認定法施行規則(平成13年法務省令第76号による改正前のもの)43条
判旨
入管法上の退去強制手続における法務大臣の裁決において、施行規則43条所定の裁決書が作成されなかったとしても、その裁決および退去強制令書発付処分が当然に違法として取り消されるものではない。
問題の所在(論点)
入管法49条3項に基づく法務大臣の裁決において、施行規則43条所定の裁決書を作成しなかった手続上の瑕疵が、当該裁決および退去強制令書発付処分の取消事由となるか。
規範
1. 施行規則43条が裁決書の作成を規定した趣旨は、法務大臣の判断の慎重・適正を期し、後続機関に対し手続終了を明確にするという「行政庁内部の事務手続」を定めたものにすぎない。 2. したがって、裁決書の作成は裁決の成立要件ではなく、また容疑者に対し理由を明らかにして争訟の便宜を与えるといった「手続的利益の保障」を目的とするものでもない。 3. 手続上の瑕疵が取消事由となるかは、当該瑕疵によって判断の慎重・適正が損なわれたか、あるいは結論に影響を及ぼす可能性があるかによって決せられる。
事件番号: 昭和47(行ツ)65 / 裁判年月日: 昭和51年1月26日 / 結論: 棄却
いわゆる政治犯罪人不引渡の原則は、未だ確立した一般的な国際慣習法とは認められない。
重要事実
1. イラン国籍の外国人である上告人が、短期滞在の在留期間経過後も不法残留したとして退去強制手続を受けた。 2. 上告人は入管法24条4号ロ(不法残留)に該当することを争わず、法務大臣に対し異議の申出をしたが、理由がない旨の裁決(本件裁決)がなされた。 3. 本件裁決に際し、施行規則43条および別記様式が定める「事実の認定・証拠・適用法条を記載した裁決書」は作成されなかった。 4. 上告人は裁決書不作成の瑕疵を理由に、裁決および退去強制令書発付処分の取消しを求めた。
あてはめ
1. 本件において、上告人が退去強制事由に該当する事実は前段階の認定・判定手続で既に明らかになっており、上告人自身もこれを争っていなかった。 2. 裁決書が作成されなかったとしても、法務大臣の判断の慎重・適正さが損なわれたとはいえず、結論に影響を及ぼすものでもないことは明らかである。 3. 在留特別許可(法50条1項)の判断についても、規則43条は当該判断に係る書面作成を求めているとは解されず、また上告人は裁決当時、難民該当性を主張する等の特別な事情を具体的に供述していなかった。 4. 以上の事情に照らせば、裁決書不作成という規則違反はあるものの、容疑者の手続的利益を侵害したとはいえず、取消しを要する程度の瑕疵とは認められない。
結論
本件裁決に裁決書不作成の瑕疵があるとしても、それによって直ちに裁決および退去強制令書発付処分を取り消すべき違法事由には当たらない。
実務上の射程
行政手続において法令が書面作成を義務付けている場合であっても、その趣旨が行政内部の適正確保に留まり、相手方の手続的権利(不服申立ての便宜等)を直接保障するものでない限り、結論に影響しない軽微な瑕疵は取消事由とはならないことを示した。
事件番号: 昭和34(オ)400 / 裁判年月日: 昭和35年4月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法務大臣による在留特別許可の付与は自由裁量に属し、在留期間経過後の外国人に対する退去強制手続が人道上極めて残虐で公序良俗に反するとは認められない限り、憲法にも違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、在留許可期間が経過した後も日本国内に在留していた外国人である。これに対し当局が退去強制令書を発付し…
事件番号: 平成18(行ツ)135 / 裁判年月日: 平成20年6月4日 / 結論: 破棄自判
1 国籍法3条1項が,日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子について,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した(準正のあった)場合に限り届出による日本国籍の取得を認めていることによって,認知されたにとどまる子と準正のあった子との間に日本国籍の取得に関する区別を生じさせていることは,遅く…
事件番号: 昭和37(オ)853 / 裁判年月日: 昭和40年12月23日 / 結論: 棄却
外国政府の発給した旅券を所持して現に日本に居住する者が、日本国政府から再入国の許可を受け、再入国に際し入国審査官からその旅券に上陸許可の認印を受けたとしても、適法な入国手続を経ていない以上、右の事実だけによつて在留資格を取得するのではない。
事件番号: 平成6(行ツ)153 / 裁判年月日: 平成10年4月10日 / 結論: 棄却
法務大臣が、日本国に居住する大韓民国国民の法的地位及び待遇に関する日本国と大韓民国との間の協定の実施に伴う出入国管理特別法一条の規定に基づく許可を受けて本邦で永住することができる地位を有していた者に対し、外国人登録法(昭和六二年法律第一〇二号による改正前のもの)一四条一項に基づく指紋の押なつを拒否していることを理由とし…