外国政府の発給した旅券を所持して現に日本に居住する者が、日本国政府から再入国の許可を受け、再入国に際し入国審査官からその旅券に上陸許可の認印を受けたとしても、適法な入国手続を経ていない以上、右の事実だけによつて在留資格を取得するのではない。
再入国の許可、再入国上陸の認印と在留資格取得の有無。
外国人登録令3条,外国人登録令16条,外国人登録法附則4項,出入国管理令6条,出入国管理令9条,出入国管理令26条
判旨
外国人の入国に関する条件は国の立法政策に委ねられており、当初の不法入国が後の有効な旅券取得や再入国許可によって当然に治癒されることはない。再入国許可は従前の在留状態を維持したまま再入国を認める処分に過ぎず、新たな在留資格を付与するものではない。
問題の所在(論点)
不法入国した外国人が、事後的に有効な旅券を取得したり、再入国許可を得て実際に上陸許可の証印を受けたりすることによって、当初の入国の不法性が治癒され、新たな在留資格を取得するか。
規範
外国人の入国をいかなる条件で認めるかは国際法上の国内事項として国の立法政策に委ねられる。わが国の法制上、上陸には有効な旅券と査証を要し、当初の入国が不法である場合、その後に有効な旅券等を取得したとしても、特段の法的根拠がない限り在留の不法性は治癒されない。また、再入国許可(出入国管理令26条等)は、現在の在留条件を維持したまま再入国を認める性質の処分であり、新たな在留資格を創設的に付与する効果は有しない。
重要事実
上告人は昭和23年、連合国最高司令官の承認を受けずに不法入国した台湾人である。その後、中華民国政府発給の有効な旅券や華僑臨時登記証を取得し、さらに日本政府から2度にわたる再入国許可を受け、実際に一度出国した後に審査官から上陸許可の証印を受けて再入国した。上告人は、これらの事実によって入国の不法性が治癒され、適法な在留資格を得たと主張して、外国人登録法上の在留の適法性を争った。
事件番号: 昭和53(行ツ)37 / 裁判年月日: 昭和54年10月23日 / 結論: 棄却
本邦に不法入国し、そのまま在留を継続する外国人は、出入国管理令九条三項の規定により決定された在留資格をもつて在留するものではないので、在留が長期間平穏に継続されたからといつて直ちに法的保護を受けうるものではない。
あてはめ
上告人は、査証のない旅券や華僑臨時登記証を所持していたに過ぎず、これらに入国審査上の査証と同等の効力は認められない。また、再入国許可は、本邦在留中の外国人が一時出国後に「さきの在留条件のまま」再入国することを認める手続である。上告人は当初の入国自体が不法であり、再入国許可やその際の上陸証印によっても、不法在留という従前の状態が継続するだけであって、適法な在留資格が新たに発生したとはいえない。
結論
上告人の本邦在留は依然として不適法である。有効な旅券の取得や再入国許可、上陸証印の付与があったとしても、当初の不法入国による在留の不法性は治癒されず、適法な在留資格を取得したことにはならない。
実務上の射程
外国人の入国管理に関する国家の広範な裁量を前提とし、再入国許可の法的性質が「在留状態の継続」に過ぎないことを明らかにした判例である。行政法や憲法の外国人の権利に関する答案において、在留資格の取得や継続の厳格性を論じる際の根拠として利用できる。
事件番号: 昭和34(オ)400 / 裁判年月日: 昭和35年4月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法務大臣による在留特別許可の付与は自由裁量に属し、在留期間経過後の外国人に対する退去強制手続が人道上極めて残虐で公序良俗に反するとは認められない限り、憲法にも違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、在留許可期間が経過した後も日本国内に在留していた外国人である。これに対し当局が退去強制令書を発付し…
事件番号: 昭和47(行ツ)65 / 裁判年月日: 昭和51年1月26日 / 結論: 棄却
いわゆる政治犯罪人不引渡の原則は、未だ確立した一般的な国際慣習法とは認められない。
事件番号: 昭和34(オ)41 / 裁判年月日: 昭和35年4月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】生活の本拠である住所の有無は、居住を継続していたかという客観的な事実に基づき判断され、強制疎開等のやむを得ない事情による離脱であっても、長期間の不在があれば住所を失ったものとみなされる。 第1 事案の概要:上告人は元々日本国籍を有し、神戸市に居住していたが、昭和19年に戦時下の強制疎開のためやむを…
事件番号: 平成18(行ツ)135 / 裁判年月日: 平成20年6月4日 / 結論: 破棄自判
1 国籍法3条1項が,日本国民である父と日本国民でない母との間に出生した後に父から認知された子について,父母の婚姻により嫡出子たる身分を取得した(準正のあった)場合に限り届出による日本国籍の取得を認めていることによって,認知されたにとどまる子と準正のあった子との間に日本国籍の取得に関する区別を生じさせていることは,遅く…