判旨
生活の本拠である住所の有無は、居住を継続していたかという客観的な事実に基づき判断され、強制疎開等のやむを得ない事情による離脱であっても、長期間の不在があれば住所を失ったものとみなされる。
問題の所在(論点)
強制疎開という本人の意思に基づかないやむを得ない事情によって生活の場所を離れた場合であっても、元の居住地における「住所」を失ったと解されるか。
規範
民法上の「住所」とは、各人の生活の本拠をいい、客観的に生活の実態が継続しているか否かによって判断される。一時的な便宜や主観的な定住意思のみでは足りず、現実に継続して住居を有しているという客観的事実が必要である。
重要事実
上告人は元々日本国籍を有し、神戸市に居住していたが、昭和19年に戦時下の強制疎開のためやむを得ず台湾に帰還した。その後、昭和24年に連合国最高司令官の許可を得て再入国したが、その間の約5年間は神戸を離れていた。
あてはめ
上告人は強制疎開というやむを得ない事情があったと主張するが、昭和19年から昭和24年までの約5年間にわたり台湾に帰郷していた事実は、神戸における生活の実態が断絶したことを示す。したがって、たとえ再入国したとしても、その不在期間中、引き続き神戸に住居(生活の本拠)を有していたとは認められない。
結論
上告人は、台湾に帰還した時点をもって神戸における住所を失ったものといえる。したがって、引き続き神戸に住所を有していたとの主張は認められない。
実務上の射程
住所の認定において主観的な事情(疎開の強制性)よりも、客観的な居住実態の存否を重視する姿勢を示した。裁判管轄の決定や送達の有効性など、手続法上の住所の認定が争点となる場面で、客観的な離脱事実を強調する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)400 / 裁判年月日: 昭和35年4月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法務大臣による在留特別許可の付与は自由裁量に属し、在留期間経過後の外国人に対する退去強制手続が人道上極めて残虐で公序良俗に反するとは認められない限り、憲法にも違反しない。 第1 事案の概要:上告人は、在留許可期間が経過した後も日本国内に在留していた外国人である。これに対し当局が退去強制令書を発付し…
事件番号: 昭和34(オ)299 / 裁判年月日: 昭和35年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法上の住所の意義に関し、生活の本拠をもって住所と定めるべきであり、特定の時点において当該地に住所を有していたか否かは、客観的な事実関係に基づいて判断される。 第1 事案の概要:上告人は、昭和22年9月4日当時、a町に住所を有していたと主張したが、原審は事実関係に基づき、当時の上告人の生活実態がa…
事件番号: 昭和37(オ)853 / 裁判年月日: 昭和40年12月23日 / 結論: 棄却
外国政府の発給した旅券を所持して現に日本に居住する者が、日本国政府から再入国の許可を受け、再入国に際し入国審査官からその旅券に上陸許可の認印を受けたとしても、適法な入国手続を経ていない以上、右の事実だけによつて在留資格を取得するのではない。
事件番号: 昭和47(行ツ)65 / 裁判年月日: 昭和51年1月26日 / 結論: 棄却
いわゆる政治犯罪人不引渡の原則は、未だ確立した一般的な国際慣習法とは認められない。
事件番号: 昭和30(オ)518 / 裁判年月日: 昭和33年2月28日 / 結論: 棄却
一 裁判官が、前審において口頭弁論に列席し、当事者の陳述・証拠の申出・証人の供述を聴き、証拠決定をし、その他訴訟指揮に関する決定に関与したというだけでは、民事訴訟法第三五条第六号にいう裁判官が前審の裁判に関与した場合に当らない。 二 遡及買収基準日当時における住所の所在の認定につき爾後の事実をしんしやくすることは違法で…