建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合には,注文者は,請負人に対し,建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することができる。
建築請負の仕事の目的物である建物に重大な瑕疵があるためにこれを建て替えざるを得ない場合に注文者が請負人に対し建物の建て替えに要する費用相当額の損害賠償を請求することの可否
民法634条2項,民法635条
判旨
建物に重大な瑕疵があり、建て替えるほかはない場合、注文者は請負人に対し、民法635条但書の規定にかかわらず、建て替え費用相当額の損害賠償を請求することができる。
問題の所在(論点)
建物に重大な瑕疵があって契約の目的を達成できない場合であっても、解除を禁止する民法635条但書の趣旨に照らし、建て替え費用相当額の損害賠償請求が認められるか。
規範
建物その他土地の工作物の請負において、建物に重大な瑕疵があり、技術的・経済的にみて建て替えるほかはない場合には、建物の収去は社会経済的損失が大きいとはいえず、また請負人の契約履行責任の観点からも過酷とはいえない。したがって、注文者は請負人に対し、建て替えに要する費用相当額を損害として、その賠償を請求することができる。
重要事実
注文者(被上告人)が請負人(上告人)に建築を依頼した建物は、基礎が脆弱で土台との接合も粗雑であり、不良材料の使用も相まって建物全体の強度・安全性が著しく欠如していた。地震や台風等の衝撃で倒壊しかねない危険な状態にあり、個別の補修では根本的な欠陥を除去できず、土台や基礎から全てやり直す必要があるため、技術的・経済的にみて建て替えるほかはない状態であった。
あてはめ
本件建物は、構造主要部に重大な欠陥があり、倒壊の危険性すら認められるものであって、個別の補修は不可能であり建て替えるほかはない。このような欠陥建物を収去・再建築させることは、利用価値のない工作物を除去するに等しく、社会経済的な損失は少ない。また、瑕疵の程度が極めて重大であることに鑑みれば、建て替え費用を負担させることは請負人の履行責任の範囲内であり、不当に過酷な負担を強いるものでもない。
結論
本件建物の瑕疵は建て替えるほかはないほど重大であるから、民法635条但書の制限にかかわらず、注文者は建て替え費用相当額の損害賠償を請求できる。
実務上の射程
工作物責任における「解除禁止(635条但書、現559条・562条以下参照)」の潜脱ではないかという反論に対し、損害賠償の形であれば実質的に解除と同様の効果(建て替え)を認める射程を持つ。建物として存続させる価値がないほど瑕疵が重大な場合に限定して適用される法理である。
事件番号: 昭和31(オ)395 / 裁判年月日: 昭和34年5月14日 / 結論: 棄却
注文者の指定場所に建物を建築すべき請負契約において、注文者が建築確認を受け得るかどうかは、右事情が当事者間で特に契約の内容とされないかぎり、契約の要素と解すべきではない。